解禁2週間で内々定7割 大手新卒採用、終了宣言も
はや終盤戦
8月1日に解禁となった大手企業の新卒採用の選考が急ピッチで進んでいる。リクルートキャリアが27日に発表した2016年春卒業予定の大学生の就職内々定率は15日時点で7割に達した。解禁後2週間で大半の学生が内々定を得たことになる。三菱商事やKDDIは採用活動の終了を宣言。今後は10月1日の内定式まで辞退を防ぐための企業の神経戦が続く。
16年卒採用で政府は経済界に「学業優先」を要請した。経団連が採用指針を変更し選考開始時期を4年生の4月から8月にずらした。リクルートキャリアは16年春卒予定の1350人の大学生・大学院生を対象に15日時点の内々定率を調べたところ70.6%に上った。
人材争奪が過熱するなか解禁前に内々定を出していた企業が経団連の非加盟企業を中心に目立った。1日の解禁時点で内々定保有者が6割に達していたことも、解禁後わずか2週間での高い内々定率につながった。
東レも目標確保
すでに計画の採用数を確保した企業も多い。三菱商事は総合職約160人、事務職約30人に内々定を出し採用活動の終了を宣言した。KDDIや東レも目標人数を確保した。日立製作所は技術系500人の採用をほぼ終え、事務系の定員100人も半分以上が埋まった。9月中旬で採用を終える見通しだ。
複数の内々定を得た学生は今度は企業を選別する側に回る。リクルートキャリアによると内々定辞退を1社以上経験した学生は15日時点で48.6%。昨年の解禁日の4月1日時点の比率(24.1%)を大きく上回った。
慶応義塾大学4年の女子学生(22)は第1志望の総合商社から5日に内々定を得た。他の5社は辞退を申し出た。「辞退するのは心が痛んだが自分のしたい仕事ができる会社を選んだ」。東京工業大学大学院2年生の男子学生(23)は5月下旬に外資系システム大手から内々定をもらったが、本命の会社で採用が決まったため「辞退の連絡をする」という。
辞退防止に腐心
企業は10月1日の内定式まで神経戦を強いられそうだ。アルプス電気は「計画数を確保しても他社に奪われる恐れがある」と危惧する。内々定者向け専用サイトで社員が期待の声を伝えるなど気を使っている。LINE(東京・渋谷)は8月に仕事内容の理解を深めてもらうためのワークショップを開いた。
中小や地方の企業は厳しい情勢が続く。「8月1日以降、中小で内々定辞退が相次いでいる」とマイナビ編集長の吉本隆男氏は指摘する。終了宣言が相次ぐ大手とは対照的に、中小の採用は長期化しそうだ。