マイナンバー 日々の生活便利になるも悪用に注意
からすけ 1人に1つだけの番号か。何だか野球やサッカーの背番号みたいだね。でも、どうしてそんな番号がボクたちに必要なのかな?
役所の手続き 早く簡単に
イチ子 マイナンバーの正式名は「社会保障・税番号制度」よ。何のために導入されるのか、想像できるかしら。
からすけ 税は税金だね。社会保障って何だっけ?
イチ子 社会保障(キーワード)は、私たちが安心して生きていけるようにつくられている色々な制度のことね。年をとるともらえる年金、病気やケガのときに使える健康保険などもそうよ。
からすけ その社会保障と税金に関係があるんだね?
イチ子 そう。社会保障としてお金を受け取る人や税金を納める人は「どこに住んでいる」「お給料をいくらもらった」などを証明する書類を求められる場合があるの。1回で多くの書類が必要なときもあって、そろえる人は大変よ。多くの書類をチェックする役所などの負担も重いの。
からすけ マイナンバーがあれば解決するの?
イチ子 ええ。わざわざ書類をつけなくても、役所の担当者はこの番号を基に住所や収入の情報を簡単に確認できるようになるわ。私たち個人は多くの書類をそろえる必要がなくなるし、役所などは人手を多くかけずにチェックできるようになるの。
からすけ それはいいね。
イチ子 それとね、個人情報を役所の間で照らし合わせることができるので、払うべき税金を納めていなかったり、不正に行政サービスを受けたりしている悪い人を探すのが簡単にもなるの。マイナンバーはまず税と社会保障、それに災害対策の3つの範囲(はんい)で使う予定よ。
からすけ 同じような制度は海外にもあるの?
イチ子 国民などに番号をひとつずつ割り当てる制度は世界的には珍しくないわ。米国や欧州(おうしゅう)諸国、お隣の韓国でも様々な番号制度があるの。
からすけ なるほど。ボクも番号をもらうんだよね?
イチ子 日本に住んでいることを記録する「住民票」があれば、大人でも子どもでも番号をもらうことになるわ。外国人でも一定以上の期間、日本で暮らしていて住民票を持っている人なら対象よ。
からすけ どんな数字?
イチ子 12けたの数字で、一度もらった番号は原則、生涯(しょうがい)変わらないの。亡くなったときも、別の人に再利用はしない方針なので、本当に1人に1番号なのよ。
一生使う番号 悪用に注意
からすけ ボクの番号、どうすればわかるの?
イチ子 10月以降、家にマイナンバーが載(の)った「通知カード」(キーワード)が送られてくるわ。来年1月からは、市町村に申し込めば顔写真も入る「個人番号カード」をもらうこともできるの。こちらは運転免許証のような身分証明書としても使えるわ。
社会保障 国が国民の生活を保障する制度。年金や健康保険、生活に困った際の生活保護や子育て世帯向けの児童手当などがある。
通知カード マイナンバーが記された紙のカード。10月5日現在で住民票に登録された住所に、簡易書留で送られてくる。
からすけ 身分証明書って持ってみたかったんだよね。よし。来年すぐに申し込んで友達に見せびらかそう。
イチ子 むやみに人に見せては絶対にダメよ。マイナンバーが他人に知られると、自分になりすました悪い人に悪用される危険があるわ。通知カードなどはしっかりと保管し、マイナンバーが人目に触(ふ)れないようにしてね。
からすけ でも、ボクが番号を実際に使うのは、大人になってからだよね。
イチ子 ただ、お父さんは会社にあなたの番号も教えるの。会社は働く社員とその人が養う家族のマイナンバーを確認する決まりなのよ。からすけが高校生や大学生になってアルバイトをしたら、勤め先から「番号を教えて」と言われるわ。短期バイトでもルールは一緒よ。だから、もらった番号はしっかり管理しておかないと後で困るわよ。
からすけ そうか。でも最近、大切な個人情報が漏(も)れる事件が多いと聞いたよ。マイナンバーは大丈夫なの?
イチ子 万一、番号が漏れてしまった場合、全部の情報がいっぺんに知られないように、仕組みを工夫しているそうよ。もし番号が漏れて不正に使われる恐れがある場合だけは、マイナンバーも変えることができるの。わざと情報を漏らすような行為への罰則も強化されるわ。ただ、自分自身で番号をきちんと管理する姿勢がやっぱり一番大切よ。マイナンバーをもらうのをきっかけに、大事な個人情報は自分で守るという意識を身につけたいわね。
電話番号、初期は申し込み順
東京都立桜修館中等教育学校の荒川美奈子先生の話私たちは生活の中で様々な番号をもっています。その一つが電話番号です。1876年(明治9年)に米国のベルが電話機を発明します。翌年には早くも日本に輸入され、国産化の取り組みも始まりました。1890年(明治23年)には電話局が開業し、実用的な電話がスタートしました。
しかし、当時はなかなか一般(いっぱん)家庭には普及せず、官庁や新聞社、料理店などが主な利用者でした。初期の電話番号は申し込み順に割りあてられ、今では天気予報案内の177番は、早稲田大学の創始者で内閣総理大臣も務めた大隈重信宅の電話番号でした。その後、電話は徐々に普及し、電話番号も数字の配列を組み合わせて作られるようになりました。市外局番はその工夫の一つです。
今回始まるマイナンバー制では、どんな番号が割り当てられるのでしょう。興味を持ってみませんか。
[日経プラスワン2015年8月22日付]