中国、元軍制服組トップを取り調べ 徐氏に続き2人目
【北京=島田学】中国共産党が28日までに、胡錦濤前政権時に中国軍制服組トップだった郭伯雄・前中央軍事委員会副主席(72)を「重大な規律違反」の疑いで取り調べていることが分かった。汚職などの容疑とみられ、証拠が固まり次第、5月にも公表する。すでに汚職で党籍を剥奪された故・徐才厚氏に続き、前政権の軍制服組トップ2人がともに取り調べを受ける異例の事態となっている。
習近平国家主席が進める反腐敗運動の一環だ。軍への締め付け強化により、習氏への求心力と忠誠心を強めたい考えだ。郭氏は徐氏と同じく江沢民元国家主席に近いとされる。習氏としては軍内から江氏の影響力を取り除き、権力基盤固めの総仕上げに向けて、軍の掌握を進める方針だ。
複数の共産党関係筋によると、郭氏は昨年来、北京市内で事実上の軟禁状態に置かれていたが、今月9日に身柄を拘束された。妻ら親族のほか秘書なども相次いで拘束されたという。
郭氏を巡っては汚職などの噂が取り沙汰されていた。3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)直前には、郭氏の息子で浙江省軍区副政治委員の郭正鋼氏の調査が公表され、郭氏本人への取り調べも近いとみられていた。26日には郭氏が基盤としていた蘭州軍区の元幹部を起訴し、身柄を軍事検察機関に移したことも発表された。
中国軍はこれまで中国社会で特権階級として扱われ、党や政府の有力者でも介入しにくい構造となっていた。そのため民間への口利きや、軍内での出世のための賄賂の授受などが横行。腐敗の温床となっていたにもかかわらず、問題にメスを入れられずにいた。
なかでも江氏が人事を通じて長らく軍に影響力を維持していたことが大きい。国家主席になった胡氏すら影響力を思うように発揮できなかったとされ、習政権になってようやく腐敗問題に着手できるようになった。
郭氏や徐氏も、江氏との関係を背景に軍内で影響力を維持していた。習氏が反腐敗運動を始めた当初も、軍内で自らの影響下にある幹部を率いて習氏に抵抗したとされる。
中国メディアによると、習氏が党総書記に就いて以降、汚職などで失脚した閣僚・次官級以上の党や政府、軍幹部は26日現在で102人。軍人はそのうち34人で全体の3分の1を占める。習氏は軍内の地位に関係なく例外なく腐敗を追及していく姿勢をアピールし、軍への統制強化につなげたい考えだ。
共産党が軍と並んで今年の反腐敗運動の焦点に挙げるのが、各種業界に影響力を持ち、党幹部との結びつきも強い国有企業だ。
まずは、すでに失脚した党最高指導部の一員だった周永康氏が影響力を持っていたエネルギー業界から着手。3月以降、国有石油大手の中国石油天然気集団(CNPC)総経理、中国海洋石油総公司(CNOOC)副総経理、中国石油化工集団(シノペック・グループ)総経理を相次いで重大な規律違反などで取り調べていると発表した。
今後は李鵬元首相とその親族が影響力を持つ電力業界や通信業界などもターゲットになるとみられている。