SIMロック解除前夜 新市場狙い、沸く量販店
販売した携帯電話端末を他の携帯会社では使えないようにする「SIMロック」の解除義務化が5月1日に始まることを受けて、携帯電話の主要販路である家電量販店が相次いで格安SIMカードなどの販売拡大に動き出した。家電量販5位のヨドバシカメラが業界で初めて、SIMロックのない「SIMフリー」端末や格安SIMカード、ヨドバシ独自の設定サービスなどをひとまとめにする売り場を5月14日に開設する。各社ともキャリア大手からの乗り換えニーズへの対応を急ぐ。
「今年はSIMフリーの普及元年といっても過言ではない」。4月14日、ヨドバシが旗艦店のマルチメディアAkiba(東京・千代田)で開いた記者発表会で日野文彦常務が強調した。同社が大々的に記者発表会を開くのは珍しく、戦略事業とする力の入れようがうかがえる。
店頭に並び始めたSIMフリー端末
ヨドバシの新しい売り場「ヨドバシカメラSIMフリーカウンター」は、国内外メーカーのSIMフリー端末を並べるほか、SIMカードの申し込みなどをその場でできるようにする。対面式のカウンターでスマートフォン(スマホ)の初期設定や修理などのサービスも提供する。
格安サービスは各社の商品が乱立し初心者には選ぶハードルが高く、各社のサービスを比較できる量販店の売り場はほとんどない。端末、SIMカードともに複数社の商品を販売員に相談しながらその場で選べるのが最大の特徴だ。
SIMカードは仮想移動体通信事業者(MVNO)の8社と協力。NTTコミュニケーションズ、ニフティやビッグローブ、KDDI子会社のKDDIバリューイネイブラー(東京・新宿)の「UQモバイル」など主要企業のサービスが一堂にそろう。
その中でもヨドバシと提携するワイヤレスゲートは4月28日から、音声通話機能付きで税込み月1300円からと業界最安値圏の格安SIMカードを発売し、ヨドバシの新しい売り場の目玉にする。
ヨドバシはNTTドコモの顧客情報管理システム「アラジン」なども置いて大手からの乗り換えもできるようにする。ヨドバシの渡辺哲也事業本部長は「SIMフリーや格安SIMカードの一定のニーズが高まれば量販店からの大手キャリアへの提案力が高まる。メーカーにはキャリアとひも付く端末だけでなく、独自のSIMフリー端末も増やしてほしい」と話す。まず、秋葉原の店で始めて、同様の売り場を全20店強に広げる計画だ。
量販2位のビックカメラは自社ブランドの格安SIMカードを即日で引き渡せるカウンターの設置を8月末までにカメラ専門店などを除く全33店に広げることを決めた。最大手のヤマダ電機も東京・池袋の旗艦店の携帯売り場で「SIMロック解除義務化スタート!」と書かれたボードを用意し、来店客の関心を高める売り場にした。首都圏地盤のノジマ傘下のITX(東京・港)も格安スマホの専門店の展開を始めたばかりだ。
家電量販店の各施策でSIMロック解除への注目度が高まるのは間違いない。携帯販路のうち量販店の構成比は約2割で横ばいが続く。SIMロック解除を契機に改めて量販店の販路を活性化させたい各社の思惑もある。
SIMロック解除の対象は、5月以降に発売する端末。大手キャリアが引き留め策を打ってくる可能性も高く15~16年のうちは流動性は低いとの見方が大半だ。ただ「格安サービスのシェアは全体の1割に相当する1000万回線まで伸びる」(ヨドバシ)。将来的には一定の市場を形成するとみられ期待は大きい。
(企業報道部 大本幸宏)
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