インド、原油安が追い風 インフレ懸念後退で利下げ
【ムンバイ=堀田隆文】インド準備銀行(中央銀行)は15日、緊急政策決定会合を開き、政策金利(レポ金利)を0.25%引き下げ年7.75%とすることを決めた。利下げは1年8カ月ぶり。原油安でインフレ懸念が後退したため、金融政策を緩和方向に転換して景気下支えを図る。ロシアなど産油国の景気が低迷する一方、原油輸入国に追い風が吹く新興国の二極化が鮮明になってきた。
インド準備銀のラジャン総裁は15日発表した声明で、利下げの理由を「原油安もあって物価水準が想定を下回ったため」と説明した。「原油安は今後1年間は続く」との見通しを示し、追加利下げも示唆した。2月3日の定例会合での利下げを予想する向きはあったが、緊急会合での利下げは市場にとって想定外の決定となった。
インドは原油需要の8割を輸入に頼る。そのため原油価格が国内物価に与える影響は大きい。消費者物価指数の前年同月比上昇率は2014年前半は8%台だったが、同年10~12月は4~5%台で、準備銀が16年1月の目標としてきた6%をすでに下回っていた。
ラジャン総裁は13年9月の就任以降3回の利上げでインフレ抑制に取り組んできた。米量的緩和の終了観測を背景に、13年には通貨ルピーも一時急落していた。その後は徐々に物価上昇が鈍化。足元では原油安でインフレ懸念が大きく後退。ルピー相場の安定もあって利下げ余地が生まれた。
市場関係者や産業界は利下げを好感している。インドステイト銀行チーフエコノミストのソウミャ・カンティ・ゴーシュ氏は「利下げは広く待ち望まれていた。タイミングも申し分ない」と話す。15日、インドの代表株価指数SENSEXは前日比2%超上がった。
モディ首相主導の経済改革で7~8%成長への回帰を目指すインド政府にも追い風だ。ジャイトリー財務相は同日、「準備銀の決定は投資を復活させ、消費者の財布を潤す」と歓迎した。
原油安はロシアや中東の産油国の経済を直撃している。同じ新興国でも資源国では財政が圧迫され、景気悪化要因となる。一方、原油輸入国の代表格であるインドにとっては、原油安は財政改善にもつながる。新興国の成長株の筆頭に躍り出る公算が大きい。
新興国経済に詳しい第一生命経済研究所の西浜徹主任エコノミストは「いまの原油価格の水準が続くと、インドの国内総生産(GDP)は最大1.5~2.0%押し上げられる」と指摘する。
原油を輸入に頼るほかの新興国では「足元でインフレ率が低下している中国やフィリピンも利下げが視野に入る」(西浜氏)との見方がある。一方、インドネシアやブラジルはインフレ懸念がぬぐい去れず、利下げ余地はまだ乏しいとみる向きが多い。