[FT]低迷する石油価格 産油国財政を圧迫(社説)
米国で稼働している石油掘削リグの数は先月初めから増え始めている。価格低迷にあえいでいる石油企業と産油国にとっては最悪のニュースだ。増え方は小幅にとどまっているが、石油価格が1バレル60ドル近辺へと少し戻した状態が2~3カ月続いただけで掘削が活発になることがわかる。いかに世界の石油事情が変わったかを顕著に示している。
石油価格は1年少し前に1バレル当たり約100ドルだったが、今後予見しうる将来、その水準に戻ることはないだろう。今年上半期の上昇分は、この数カ月で4分の1近く低下したことでほとんど帳消しになった。
国際エネルギー機関(IEA)の12日の発表にあるように、世界の石油需要は堅調だが、供給はそれを上回って増えている。サウジアラビア、イラクを含むほかの石油輸出国機構(OPEC)諸国の生産も増えている。
米国のシェール産業が破綻しないことも供給量を押し上げる。破綻を予想するアナリストもいたが、シェール生産業者はコストを削減、生産性を上げてきた。シェール各社は赤字の海に漂うものの、全米では生産量の減少はごくわずかだ。
シェールオイルは世界市場の動態を変えた。競争相手のほかの産油国は対応を迫られている。
サウジアラビアは8年ぶりに国債を発行した。同国財政は危機からほど遠いが、これまでのような状況が今後数年続けば、徐々に不安定になるだろう。同じ産油大国のロシアは経済制裁もあって、より切実な問題に直面している。
産油国が困難に直面する中、石油消費国には他人の不幸を喜ぶようなところがみられる。
だが、それは賢明ではない。石油市場ほど政治的混乱と直結しやすい市場はない。財政が惨状にある国は攻撃的に対応しなければならないと感じるかもしれない。
世界的に力の均衡が変化する時には国際的緊張が突然生じやすい。私たちは今、そのような時にいるのだろう。世界中の政治家が紛争や情勢の劇的変化への警戒心を怠ってはいけない。
(2015年8月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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