ボウリング上達への近道 カギは「手首の返し」
立ち位置は「真ん中より少し右」に
生まれて35年、ボウリングで100を超えたことはない。そんな記者が自己流で練習したところですぐにうまくなるとも思えない。調べてみると、日本プロボウリング協会(東京都港区)と日本ボウリング場協会(同品川区)がプロボウラーらによるレッスンを催している。プロの助言を求め、会場のラウンドワン朝霞店に向かった。
気温の管理された室内でできるボウリングだが、30分の運動量は散歩なら80分、ラジオ体操なら50分に相当するという。「ボウリングは幅広い年齢層が楽しめるスポーツ。コツさえつかめば、最年少は9歳でパーフェクト(すべてストライク)を達成した人もいますよ」とプロボウラーの桑原澄江さん。そのコツをつかむべく教わりにきたのだ。
まずはボールを選んでと、重い方に手を伸ばしかけたところで桑原さんから一言。重い方がピンが倒れやすいと思いがちだが「違う」という。重さや、指を入れる穴の形が自分にあっていないと、かえってコントロールがつきにくくなることがある。「体重の10分の1の重さで、親指が穴の根元まで入り、ゆとりがあるのがいい」と桑原さん。7ポンドを持って軽く腕を振ったら手首に負担がかからずいい感じに。見極めのポイントは、無理のない重さだ。
ピンを見ずに三角印を狙う
そのとき「ゴン!」とボールが落ちる音。桑原さんは「あれはロフトボールというマナー違反」とぴしゃり。適切な形でボールが握れていないから、宙に放り投げてしまうのだという。レーンも傷つくので気をつけよう。
ボールが決まって投げようとすると、また指導が入った。真ん中の1番ピンに当てようとレーンの中心に立つ記者に、「遠くのピンを見ないで、手前の三角印(スパット)を狙う」。右利きの記者の場合、ストライクを狙う場合は右から2番目のスパットを通るように投げる。だから立ち位置も「中心より右寄り」で、これをストライクポジションという。右寄りから投げると右側にしか当たらない気がするのだが……。
ファールラインから1番ピンまで約18メートルのうち、手前の約3分の2にオイルが塗ってあって、つるつる滑る。この区間はボールはまっすぐ進むが残りの3分の1でボールは左に曲がるという。
そんな都合よくいくのか――。投げてみると右の溝に落ちてガター。やっぱりだめではないか。教えられた通りにならないのはなぜだろう。
「ボールは投げるのではなく、転がす」。カギは手首の返し。逆手に握ったボールは徐々に90度内側へ手首を返しながら離すように投げる。するとフックボールといって、ボールにスピンがかかり自然と軌道が左に曲がっていく。
勢いつける小走り 転倒などの危険性
勢いをつけようと小走り助走するのはNGだ。転倒してケガをする原因になりかねない。細かいコントロールも難しくなる。確かに、10年ぶりにはいたシューズは思いのほか滑る。普通の運動靴の感覚でいると危ないとわかった。また、力任せに投げると腕や手首に余計な負担がかかる。
教えられた場所から何度か投げる練習を繰り返す。最初はうまくいかなかったが、手首を返す感覚がだんだんわかってくると、ボールがぎりぎり溝に落ちなくなって、ピンの手前でぐっと曲がり出した。そしてきれいなストライク。うれしくて、教室の参加者と思わずハイタッチした。
とにかく勢いよく真ん中から1番ピンに当てさえすればいいと思い込んでいたが、とんでもない誤解だった。
次に教わったのが「3・6・9システム」。ストライクを取り損ねたとき、2投目に残りのピンを全部倒してスペアに持ち込む方法という。
では、どの場所からどう投げるのか。目安はレーンの板目。例えば2番ピン、8番ピンを倒したい場合は1投目を投げた場所から板目3枚分、右にずれる。そして2番スパットへ真っすぐ投げる。同様に4番は右に6枚目、7番は同9枚目に立つ。
これができるだけで「スコアが30はあがる」といわれたが、立ち位置が変わるとうまく投げられない。身につくまで時間がかかるかも。
右側のピンが残ったときの基準は、レーンの左端のドット付近。10番ピンを狙うテンピンポジションで、3番スパットを通す。6番が目標ならテンピンポジションから3板目右へずれ、3、9番はさらに3板目分右へずれる。ただこちらは左側のピンを狙うより難易度が高いと聞いた。
それでも1日教わっただけでスコアは124まで伸びた。最低ラインと思っていた100には届いた。これなら子どもにも教えてあげられるかもしれない。
ペットボトルで自主練
今回、プロにポイントを伝授してもらっただけでもスコアが大幅にアップした。ではさらに上を目指すにはどうしたらいいか。桑原さんに自宅で手軽にできる練習法を教わった。
用意するのはペットボトル1本。ボールに見立ててフォームの練習をするのだ。鍛えるのは手首の返し。逆手で真ん中を持ったペットボトルは、しっかりフックをかけるように振ると、フィニッシュでは縦向きに。これを毎日やるだけでかなり上達するという。
うまくなる早さにはもちろん個人差があるだろう。ただ、理論を頭に入れて取り組むことで、ボウリングの知らなかった面白さに触れることができた。
(松原礼奈)
[日経プラスワン2015年3月14日付]