ベトナム書記長会見、日本と経済・安保で連携
【ハノイ=富山篤】ベトナムの最高指導者、グエン・フー・チョン共産党書記長は12日、初の訪日(15~18日)を前にハノイで日本経済新聞などの取材に応じた。「日本との戦略的パートナーシップを発展させる」として政治・経済分野で広く連携を強化する考えを強調した。環太平洋経済連携協定(TPP)については、実現すればベトナムが「重要な役割を果たす」と自信をのぞかせた。
チョン書記長は2009年に合意し、14年に構築した日越の戦略的パートナーシップについて「両国関係を迅速かつ効率的に深める役割を果たした」と高く評価した。日越関係の今後については「経済のみならず、幅広い分野でより深く連携することを期待する」とし、発電所、新幹線などインフラの整備、製造業の技術移転、国防など広範な分野での連携を示唆した。
ベトナムは南シナ海の領有権を巡り中国との関係が緊張している。海上警備能力が高い日本との協力を進めたい思惑があるとみられる。今年5月、海上自衛隊の哨戒機「P3C」が中部の都市ダナンに立ち寄るなど事実上の連携は進みつつあり、今後広がる可能性はある。
ベトナムは約40の国とFTA(自由貿易協定)を含む通商協定を結ぶなど、自由貿易体制を急ピッチで整備している。現在、交渉中のTPPについては「12カ国が合意し、自由貿易が動き出せばベトナムは中心的な役割を果たす」と意欲を語った。
ベトナムは電子部品、縫製品、農水産品などの輸出と堅調な内需が経済成長の原動力だ。ただ、チョン書記長は「ベトナム経済は生産性・品質の低さなど基礎的な問題を抱えている」と指摘。そのうえで、「人材教育とインフラ整備、地方都市の開発を三位一体で進めていく」とした。
チョン書記長は保守穏健派の代表格で、ドイモイ(刷新)政策の基礎である「社会主義市場経済」路線の理論的支柱。16年はドイモイ導入から30年。その評価について「貧困を減らし、年間平均7%程度の経済成長をなし遂げられた功績は大きい」と話した。今後は「行政改革、透明性の高い規制の導入などで外資企業が活動しやすい環境整備が不可欠」と指摘した。