H2A打ち上げ成功 情報収集衛星、安保や災害に活用
三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1日午前10時21分、政府の情報収集衛星を載せた国産主力ロケット「H2A」27号機を種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げた。発射から約20分後に衛星を分離、予定の軌道に投入し打ち上げは成功した。
H2Aの打ち上げ成功は21回連続で、成功率は96.3パーセント(27機中26機)。国際社会の信頼を得る目安の95パーセントを上回る。2007年にJAXAから三菱重工に打ち上げ事業が移管した後、15機すべてが成功している。
政府は1月、国家戦略となる新宇宙基本計画を発表し、安全保障の強化を狙って事実上の偵察衛星となる情報収集衛星の積極活用を打ち出した。災害関連の情報も集める。情報収集衛星は現在、昼間に地上を探る光学衛星2基と、曇りでも見通せるレーダー衛星2基の合計4基を運用中だ。
今回打ち上げたのはレーダー衛星の予備機。打ち上げ後の記者会見で内閣衛星情報センターの下平幸二所長は「予備機の打ち上げで既存の衛星にトラブルが起きても常に4基体制を保つことができるようになった」と話した。政府は3月末までに光学衛星5号機をH2A28号機で打ち上げる予定だ。
三菱重工は15年後半にカナダの通信衛星を打ち上げる方針で、日本のロケットが海外の大型商業衛星の打ち上げを担う初めての例になる。ロケットへの国際的な信用度が高まれば、海外の人工衛星の打ち上げの受注獲得に向け弾みがつく。
同社の水谷久和取締役常務執行役員は「H2Aの高度化や新型基幹ロケットの開発作業も順調だ。量的・質的な向上をはかって期待に応えたい」と話した。
今回のロケットは当初、1月29日に打ち上げる予定だったが、種子島宇宙センター周辺の天候不良を理由に延期していた。