ハラルを知っていますか
日本を訪れる外国人の増加に伴い、イスラム圏からの旅行者と接する機会が増えている。気持ちよく過ごしてもらうには、生活習慣への理解と配慮が大切だ。これが日本の魅力を高め、ひいてはイスラム圏市場の開拓につながる。
ハラルという言葉を聞くようになってきた。本来は「許された」という意味のアラビア語だ。イスラム教は豚肉を食べたり、アルコールを飲んだりすることを禁じている。牛肉や鳥肉も決められた手順で処理したものに限られる。
食事は旅の楽しみだ。だが、信徒には提供される食事がハラルであるかどうかは大切な問題だ。
心配せずに食べたい。こうした声に応える飲食店が、少しずつ増えている。日本料理店の美濃吉(京都市)は一部店舗でイスラム教徒向けの懐石料理を提供する。新横浜ラーメン博物館(横浜市)では、大豆でコクを出す"とんこつ"風ラーメンが食べられる。
政府は東京五輪が開かれる2020年に日本を訪れる外国人数を、2000万人に倍増させる目標を掲げる。実現には多様な文化や生活習慣に配慮した、「おもてなし」の体制を整える必要がある。
日本政府観光局はイスラム教徒でも安心して食事ができる飲食店のリストを作り、国内外で配り始めた。空港やショッピングセンターには礼拝の場所を用意するところもある。こうした情報提供を充実させていきたい。
世界で16億人のイスラム教徒は、30年には22億人に増える。旅行者が日本で体験した食の魅力を母国に伝えることは、日本の食品輸出を後押しするはずだ。
食品や食材が、信徒が飲食できる基準に合格していることを証明する「ハラル認証」を取得する日本企業も増えている。国内で活動する認証団体は数十あるという。
ただし、ハラル認証には国際的な統一基準があるわけではない。ある国が認める基準が、別の国では認められないこともある。輸出を増やすには、企業が認証について正しく知ることが必要だろう。