ルノー、仏政府の影響力拡大 株主総会で新制度決定
【パリ=竹内康雄】フランスの自動車大手ルノーが30日開いた株主総会で、株式を2年以上保有した株主に2倍の議決権を与える新ルールの導入が決まった。筆頭株主である仏政府の経営への影響拡大を恐れるルノー・日産自動車連合は同ルール採用に反対したが、仏政府が導入を後押しした。ルノーと仏政府の関係が悪化するのは確実で、ルノーと日産が対抗措置を打ち出す可能性もある。
発端は仏政府が8日、ルノー株を買い増すと発表したこと。国内産業や雇用保護を目的に2014年に制定した通称「フロランジュ法」を適用する狙いだ。同法は株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与えると定めた。ただ株主総会で投票者の3分の2が反対すれば適用されない。ルノー経営陣は株主総会に現行制度存続を求める議案を提出したが、仏政府はルノー株を一時的に買い増して否決に持ち込んだ。
仏政府のルノーへの議決権は従来の15%から28%に増える見通し。かたや日産はルノー株を15%保有しながら議決権はゼロ。すでに大株主の座にある仏政府の影響力がさらに増すことは日産には「健全ではない」(幹部)と映る。関係者が懸念するのは、ルノーを通じて仏政府が日産の経営に影響を及ぼす事態だ。
例えば日産が13年に発表したルノー工場での日産車の生産計画。欧州景気の悪化が続く中、国内の雇用確保を仏政府がルノーに強く訴えたことで日産が「支援」に動いたとされる。28%の議決権を持った仏政府が、日産が望まない事業対応をルノー・日産連合に求める可能性も否定できない。
対策は見えていない。ルノーが43.4%の日産株を、日産が議決権の無い15%のルノー株を保有する持ち合いの姿は「アライアンスの成功の象徴」(ゴーン最高経営責任者)。仏政府の議決権増に対応して日産に15%の議決権を与えるとの対抗案も浮上する。その場合は提携バランスに影響を及ぼしかねず、ルノーの日産への持ち株比率をどうするかも焦点となる。
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