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始動した燃料電池車 普及の鍵は「眠れる水素工場」

編集委員 大西康之

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トヨタ自動車が2014年度内に燃料電池車(FCV)を市販する。価格を700万円程度まで引き下げ、政府も一台あたり200万~300万円の補助金を出す構えだ。普及への期待が一気に高まるが、気になるのが燃料電池を動かす水素の供給体制だ。FCVを走らせるのに十分な水素は調達できるのか、ガソリンと比べた価格は。水素事情を探ってみた。

生産過程で発生するCO2が課題

FCVは水素を燃やし(酸化させ)て走るため、走った後に出てくるのは水だけ。「究極のエコカー」と呼ばれるゆえんだ。しかし話はそれほど単純ではない。水素を作る過程で二酸化炭素(CO2)が発生するのだ。

そもそも水素はどうやって作るか。中学の理科で習ったように、水から酸素を取り除けば水素になる。つまり「水素は水から作ることができる」。間違いではないがFCVの燃料としての水素を考えると、この作り方は現時点では現実的ではない。工業用水素で国内最大のシェアを持つ岩谷産業の担当者は「水を水素と酸素に分解するには大きなエネルギー(電力)が必要で、包丁でスパッと切り離すようにはいきません」と説明する。

もちろん原理的には、水から水素を作れる。しかし電解にかかる電力コストを加味すると、かなり割高になってしまう。このため現在、半導体の製造工程や金属の表面処理などで使う工業用水素はLPガスや石油、天然ガスといった化石燃料を分解して作る。しかし生産過程でCO2が発生し、化石燃料への依存度も低下しない欠点がある。

さらに現在、国内の水素生産量は年間1億立方メートル。だがFCVの普及が本格化する25年の需要は24億立方メートルと予想されている。この需給ギャップを埋めながら、水素を生産するときのCO2排出量を減らさなければ、FCVは「究極のエコカー」にはなれない。

素材メーカーが排出ガスから取り出し

考えられる解決方法は大きく分けて2つある。一つは「都市鉱山」の活用だ。日本国内には「眠れる水素工場」がかなりの規模で存在する。高炉や化学プラントである。鉄鋼や化学品の製造過程で発生する排出ガスの中には大量の水素が含まれている。高炉大手や化学品メーカーはこれらの一部を燃料として再利用しているが、その大半は捨てられている。その量は現在、水素工場で作られている工業用水素の100倍近いとも言われる。素材メーカーが排出ガスから水素を取り出して外販を始めれば、日本全体でCO2の排出量を増やさずに水素の供給量を引き上げることが可能だ。

本物の鉱山を使う手もある。オーストラリアなどにある低品質の褐炭から水素を取り出すのだ。火力発電所では使えない低品質の褐炭は現在、そのほとんどが使われずに放置されている。ここから水素を取り出し、液化して日本に運んでくるのだ。水素の生産過程でCO2が発生する問題は残るが、十分な量の水素を確保するという意味では最も現実的だろう。

そして第3の方法が実現すれば、FCVはより「究極のエコカー」に近づく。洋上に水素工場を浮かべ、組み上げた海水を太陽光や風力で作った電気で分解するのだ。水と太陽光、風力を使っていくらでも水素を作ることができる。コストを考えると今の時点では現実的な解とは言えないが、ここまで来ると水素は「電気の缶詰」になる。

H2OをH2に分解するときに充電し、H2を燃やしてH2Oに戻す時に放電する。このサイクルを繰り返せば、「Well to Wheel(井戸から車輪まで)」で完全な「CO2フリー」が実現する。水素先進国のアイスランドでは地熱や水力で生み出した電気で水素を作り、自動車や船舶を動かす国家プロジェクトが進められているのだから、洋上水素工場もおとぎ話ではない。

燃料費はガソリン車の2倍以上

最後に気になる価格を見てみよう。現在、工業用水素の相場は1立方メートル当たり約150円。最新のFCVは水素1立方メートルで10キロメートル走るから、ガソリン車並みに満タンで500キロメートル走るには50立方メートル、つまり7500円の燃料費がかかる。感覚的にはガソリン車とほぼ同等の燃費性能だが「税金や水素ステーションの設置コストなどを足し込むと、2倍以上にはなる」(岩谷産業)という。

その水素ステーションは今年度でも全国で約40カ所足らず。大都市の一部でしか設置されない。3万カ所を超えるガソリンステーションに追い付くにはまだ時間がかかる。FCVを販売するディーラーが水素漏れ点検装置などの導入に1店あたり500万円以上を投じる必要があることも普及の妨げだ。

しかし初代プリウスが登場したのは今から16年前。当時に比べれば今の方が「消費者のエコカーへの関心は格段に高い」(トヨタ)。水素インフラの整備にはかなりの時間とお金がかかるが、道筋が見えていないわけではない。あとは日本の産業界全体が本気で「水素社会」を作る気になるかどうかの問題である。

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