原油安を反映しない補正予算
原油安が進んでいるのに、エネルギー費用の負担減のためにトラック事業者や漁業者などへの支援を盛り込んだ。政府がまとめた2014年度補正予算案には、疑問が残るといわざるを得ない。
総額3兆円あまりの補正予算案は、昨年末につくった緊急経済対策を具体化するものだ。
地方創生の一環として地方自治体向けの交付金をつくったり、少子化対策として保育所を増やしたりする。災害対策や震災復興の予算も計上した。
最大の問題はエネルギー対策だ。原油価格が1バレル50ドル前後で推移している。ガソリンや灯油の値段も下がっている。そんな中で中小トラック事業者や漁業者への支援が本当に必要なのだろうか。
ガソリンなどの燃料費を補助する政策は、財政赤字を膨らませたり、エネルギー効率を高める努力を妨げたりするとして、国際機関が新興国や途上国に縮減を求めてきたものだ。
最近では、インドやインドネシアなども燃料補助金の縮小に動いている。これに対し、先進国の日本が逆行する政策を打ち出しているのは理解に苦しむ。
資源輸入国の日本にとって、原油安は交易条件の改善を通じて景気を押し上げる好材料だ。景気には消費など一部に弱さがみられるが、昨年秋以降は緩やかな持ち直しが続いているとみていい。
過去の悪い景気指標をみて景気対策を打ち出すものの、執行するときには景気はすでに回復していた。こんな不整合を今回も繰り返していないか、きちんとした検証が必要だ。
日本の財政は先進国で最悪の状態だ。過去2回の補正予算と異なり、今回は税収などで増えた歳入をすべて使い切ることはせず、新規国債発行を一部減額する。財政規律に配慮したのは当然だ。
ただ、当初予算では計上しにくい政策を各省庁が補正予算案に押し込んだのではないか、という懸念はある。国会は審議を通じ歳出の中身を厳しく点検すべきだ。