出所者受け入れ企業3倍に 20年までに法務省、奨励金も
法務省は16日、刑務所や少年院を出た人を雇用する企業を2020年までに現在の3倍にあたる約1500社に増やす方針を決めた。仕事や居場所がない出所者らはある人と比べ再犯率が高い傾向があり、支援を充実させて新たな犯罪の抑制につなげる。来年度から企業に対する奨励金制度を創設するなどして安定的な雇用をサポートする。
20年開催の東京五輪に向けて安全な日本をアピールするのが狙い。政府は同日、犯罪対策閣僚会議を開催し、安倍晋三首相は「治安向上のため再犯防止は喫緊の課題。罪を犯した人を社会から排除して孤立させるのではなく、再び受け入れることが大切だ」と述べた。
法務省は犯歴などを理解したうえで出所者らを雇う企業を登録する「協力雇用主制度」を設けている。今年4月時点で約1万2600社が登録しているが、受け入れは義務ではなく、出所者の悩みの相談に乗るなどのノウハウを持つ企業が限られていることから、実際に雇用したのは472社にとどまっている。
制度の活性化を図るため、法務省は15年度から協力雇用主に奨励金を支給する。出所者を雇用した場合、1人当たり毎月8万円を半年間支払い、その後も就労を継続すれば3カ月ごとに12万円を最大2回支給する。
出所者を支援する保護司の活動拠点となる更生保護サポートセンターも約100カ所新設して全国計約450カ所とし、生活や仕事に関する相談に乗りやすくする。こうした支援策をてこに、20年までに雇用主を新たに1千社増やし、現在の約3倍にする方針だ。
また、出所者の一時的な滞在先として法務大臣が認可する「更生保護施設」やNPO法人などが運営する「自立準備ホーム」で、再犯率の高い薬物犯を重点的に支援するなど、居場所の確保にも力を入れる。13年に刑務所などから出所した満期釈放者のうち、家族などとの関係が疎遠になり帰る先のない人は6368人。法務省は20年までに3割減らし、約4450人とする方針だ。
法務省によると、13年の検挙人数26万2486人に占める再犯者は12万2638人。再犯者率は46.7%で、1997年の27.9%から上昇し続けている。13年に刑務所に再入所した人の約7割は職がなく、雇用の不安定さが再犯を生む素地となっている。また、帰る先のない満期入所者の6割弱が1年未満で再び犯罪に手を染めている。