福島事故、帰還困難者に一括700万円 追加賠償
原賠審指針
文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は26日、東京電力福島第1原子力発電所事故による避難者への追加賠償の指針を決めた。放射線量が下がらず帰還が難しい地域では1人に700万円の慰謝料を一括払いするのが柱。賠償額を従来の1.5倍超に増やし移住先での新生活を後押しする。
原賠審は2011年8月に財物賠償や避難費用にかかわる最初の賠償指針を定めてから見直しをすすめてきた。4度目となる今回の見直し後、東電は新たな指針にもとづいて被災者に賠償する。
今回の見直しは年間の放射線量が50ミリシーベルト超の帰還困難区域を中心に賠償を上乗せしたのが特徴。除染の遅れで帰還の見通しが立たない避難者に移住費用を追加する。政府は従来、避難者の全員帰還を原則としてきたが現実を踏まえて転換する。
具体的には帰還困難区域や隣接地域の住民に1人700万円の一括慰謝料を上乗せする。従来の水準に加えると1人1450万円の慰謝料が払われる。対象は2万5000人超となる見通し。
帰還困難者が引っ越して家を買う費用も補償する。従来は事故前の不動産価値だけ払った。指針の見直しで、新居の建物と事故前の不動産価値の差額の75%まで払うことにする。帰還困難者の平均的な4人世帯では賠償額が約6300万円から1億円超に増える。
一方、政府が避難指示を解除した区域に戻る人への賠償も増やす。避難中は1人に1カ月10万円払っている慰謝料を、避難指示の解除後も1年間は継続する。避難中に傷んだ家を建て替える費用も一定額を支払う。
来春には福島県田村市で避難指示が解除となる見通し。政府は早期に帰還した人には1人90万円の賠償上乗せも検討。住民の帰還を促し、自治体や生活インフラの再建につなげる。
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