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スマホゲーム、黄金時代に 成長支える日本の流儀

ジャーナリスト 新 清士

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 スマートフォン(スマホ)が日本でゲーム端末の「主役」になろうとしている。スマホはここ数年、爆発的な勢いで普及すると同時に高機能化も進み、タッチパネルを使って様々な操作が可能になった。2013年に大ヒットした「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」(ガンホー・オンライン・エンターテイメント)のような人気ゲームも登場。伸び悩む家庭用ゲームと対照的に、スマホゲーム市場は急拡大している。14年はスマホがゲーム業界をけん引する構図が一段と鮮明になりそうだ。

「パズドラ」が流行語大賞の候補に

都内のJR中央線。筆者の隣に座った若い女性がアンドロイドスマホを取り出し、パズルゲーム「LINEポコパン」(LINE)を始めた。キラキラするデコレーションを施した長いつけ爪を付けた左手の中指で、器用にブロックを消していく。

JR東海道本線では、通路に立っている1人の中年男性がアップルのタブレット(多機能携帯端末)「iPad」の画面を見つめ、パズドラを一心にプレーしていた。混んでいるJR総武線の電車内でも、会社員風の若い男性がつり革を握りながらスマホでカードバトルゲーム「三国志乱舞」(スクウェア・エニックス)を遊んでいた。

13年は、そんな風にスマホゲームで遊ぶ人の姿をあちこちで頻繁に見かけるようになった。男性と女性の差はほとんど感じられない。ゲームに詳しい筆者にさえ、何のゲームを遊んでいるのか分からないケースも少なくなかった。それほどスマホゲームは種類が増え、バラエティーに富んでいる。

13年11月に発表された「ユーキャン新語・流行語大賞」候補50語の1つに「パズドラ」が選ばれた。結局、大賞は逃したものの、スマホゲームが広く社会に定着している象徴といえるだろう。多くのユーザーが、無料でゲームを遊び始めて途中でお金を払う「アイテム課金」方式に慣れてきたこともスマホゲームの普及を後押ししているとみられる。

スマホゲーム市場、日本が世界最大に

米調査会社のアップアニーが13年12月に発表した調査リポートによると、スマホアプリの売上高で同年10月、日本は米国を抜いて世界最大になった。売上高の大半を占めるのがゲームだ。同社は金額は明らかにしていないが、12年10月の日本のスマホアプリ売上高を100とすると米国は180。これが13年10月には日本が340と急増し、310の米国を上回った。

日米ともスマホアプリ市場の成長が続いているが、日本の市場規模はわずか1年間で3.4倍に急拡大したことになる。特にアンドロイド端末向けアプリ市場の成長が著しく、iPhone向け市場と互角の規模になった。これが日本市場急成長の大きな要因だ。アップアニーの調査では、日本のアンドロイド端末向けアプリ市場規模を100とすると、海外の他国の平均は40にすぎない。

調査会社のディスティモは、13年9月の日本国内のスマホアプリ売上高を210億円程度と推計している。1カ月ずれるものの、単純にアップアニーのデータとほぼ違いがないと想定すると、12年9月の単月売上高は60億円前後だったと推計される。13年にスマホゲーム市場にゲームを展開した企業は、こうした市場拡大の恩恵を大きく受けたはずだ。

アップアニーがまとめた国の人口に対するスマホ所有率をみると、日本は13年が42%と推測している。単縦計算すると、約1億2600万人の人口のうち、約5300万人が所有していることになる。一方、米国のスマホ所有率は13年は44%と推計し、約3億1000万人の人口のうち約1億3600万人が所有している計算になる。スマホの普及台数では日本と米国では2.6倍の差がある。

しかし、アップアニーの指数とスマホの普及台数を組み合わせて概算すると、スマホ1台当たりの1カ月のスマホゲームへの支払額は、日本は米国に比べ約3倍も高いことになる。アップアニーは日本のスマホ所有率が14年は62%まで拡大すると予測しており、今後も日本のスマホゲーム市場の成長が期待できる。

ガチャで高い課金に慣れている日本人

海外のゲーム会社には、日本のユーザーがなぜ、これほど高い金額をゲームに支払うのか不思議に見えるという。確かにそうかもしれない。日本人ユーザーの「カネ払いの良さ」には、日本独特のいくつかの要因が考えられる。

1つ目は、10年ごろ携帯電話向けに登場したカードバトルゲームが採用していた「ガチャ」システムの存在だ。ランダムでキャラクターカードを手に入れられるガチャでは、カードを1枚手に入れるためのクジ1回ごとに300円が課金された。多くのゲームが同じようなガチャを導入したことで、高価といえる金額が定着し、ユーザーがそれに慣れてしまった。一度、高い料金が定着すると簡単には下がらない。アイテム課金で楽しく遊ぶユーザーは、高い課金を当たり前と思ってしまうからだ。

広告マーケティング会社のサーバーズが13年12月発表したスマホアプリへの1カ月の平均課金額は300円未満の人が57%だった。これはゲームユーザーの過半数以上が無課金で遊んでいることを示唆している。課金額が300~500円未満は11%、500~1000円未満は12%と、有料で遊ぶユーザーの多くが少ない課金額で遊んでいることが分かる。1000~5000円未満は14%と1割を超すものの、5000~1万円未満は2.9%、1万円以上は3.5%と、5000円以上払う人は6%余りにすぎない。

家庭用ゲームからスマホにシフト

日本のゲーム会社は売上高をガチャシステムに依存する傾向が強い。つまり、ゲームユーザーのわずか6%程度の月額5000円を超える高額課金者に支えられているといえる。大半のゲームユーザーは、無料かちょっとした課金額で遊んでいる。だが、スマホゲーム市場の拡大に伴い高額課金ユーザーの数も増え、それがゲーム各社の収益に大きく貢献しているわけだ。

日本人がゲームに対しカネ払いが良い2つ目の要因は、コアユーザーの年齢層だ。ゲーム業界では、課金ユーザーの中心は20~30代の独身の社会人といわれている。比較的自由に使える資金に余裕がある人たちだ。この年齢層はかつて家庭用ゲームを一番熱心に買うユーザー層だった。その彼らが今、家庭用ゲームからスマホゲームに移り、それなりの金額を払って遊んでいるとみられるのだ。社会人の娯楽費として月に5000~1万円程度は驚くほど高い金額ではないだろう。

若者のパチンコ離れが加速

3つ目が、パチンコやパチスロといった日本独特の遊技機ユーザーがスマホゲームに流れ込んでいる可能性があることだ。日本生産性本部余暇創研が13年8月に発表した「レジャー白書2013」によると、遊技機で遊ぶ人の数は減少が続き、10年の1670万人に対し12年は1110万まで落ち込んだ。遊技機は売上高こそ12年に19.1兆円と巨大だが、ここ数年は急激な縮小が続いている。

特に、遊技機で遊ぶ若年層ユーザーは激減している。同白書では、1年に一度は遊技機で遊んだことのある人口参加率を取り上げ、02年と12年を比較している。10代男性は14.8%から2.0%に、20代男性は49.5%から18.1%と大幅に減少した。若者の遊技機離れが猛烈な勢いで進んでいるのだ。

もちろん、パチンコやパチスロなどの遊技機を離れたユーザーがすべてスマホゲームに移行しているわけではない。それでも、国内でスマホを所有するユーザーはアップアニーの単純計算による推計値で考えると13年で5300万人だ。スマホゲームを遊んでいるユーザーの母数は遊技機のユーザー数を大幅に超えていると考えるのが自然だろう。

遊技機の1人当たりの平均利用金額は年9万7100円。月額にすると8100円で、スマホゲームのユーザーよりもかなり高い。遊技機で遊んでいたユーザーは、スマホゲームの高額課金に対する抵抗感が他のユーザーより小さい可能性はある。

市場は大手5社の寡占状態

筆者はこうした日本独特の3つの要因が、日本のスマホゲーム市場の急成長を支えているとみている。スマホのゲームユーザーには、ゲームを通じて金銭的な見返りを期待せず、単に娯楽的な刺激に楽しさを求める若い世代も多い。少ない利用金額でいつでも遊べるスマホゲームに満足することが当たり前になると、今後、娯楽や消費に対する彼らの考え方や価値観が変わっていく可能性もあるだろう。

14年はスマホゲーム全盛期になるだろう。市場拡大を見込み、多くのゲーム会社がスマホゲームに参入したり、事業を拡大したりするのは確実だ。しかし、前述のアップアニーの調査は市場の厳しさも示唆している。ガンホー、LINE、コロプラ、セガ、バンダイナムコの上位5社がシェアの3分の2を占める寡占傾向が鮮明だからだ。新規参入組がこれら大手企業の厚い壁を崩すのは容易ではない。

開発費や広告費、大幅上昇の恐れ

大手も安穏とはしていられない。スマホの性能向上とともに、ユーザーが求めるゲームの水準も高くなるとみられる。その結果、ゲーム開発費は5000万~1億円、宣伝広告費は数千万円という現在の相場はさらに上昇。数億円の開発費が当たり前の家庭用ゲームと変わらない水準になる可能性がある。コストアップはゲーム各社の収益を圧迫し、開発競争はますます激しくなる。企業間のM&Aや提携といった再編が13年以上に活発になるかもしれない。

それでも、スマホゲーム市場の拡大は日本のゲーム業界にとって追い風になる。近年、海外ゲーム会社に押されがちだった各社が、旺盛な国内市場を背景に新しい時代を切り開こうという姿勢に転じつつあることは間違いないからだ。

ユーザーにとっては、スマホゲームの選択肢が大幅に増え、それらを楽しめる「黄金時代」到来といえそうだ。大手のゲームだけではない。大手に一泡吹かすべく、斬新なゲームの開発に日夜、必死で取り組むインディーズ(独立系)ゲーム開発会社も着々と育っている。14年はスマホゲームを舞台に、ユーザー獲得に向け大手、中小が入り乱れてしのぎを削ることになるだろう。

新清士(しん・きよし)
 1970年生まれ。慶応義塾大学商学部および環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心としたジャーナリストに。立命館大学映像学部非常勤講師も務める。グリーが設置した外部有識者が議論する「利用環境の向上に関するアドバイザリーボード」にもメンバーとして参加している。著書に電子書籍「ゲーム産業の興亡」 (アゴラ出版局)がある 。

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