東電社長、安全審査申請で柏崎・刈羽議会に説明
新潟知事とは調整つかず
東京電力の広瀬直己社長は17日、新潟県柏崎市と刈羽村の両議会を訪ね、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の安全審査を原子力規制委員会に申請する方針について説明した。再稼働の前提となる地元の理解を得るための重要な一歩となるが、最大の課題である新潟県の泉田裕彦知事とは物別れしたまま。与党が過半を制する勢いの参院選後に再び会談できるかが焦点になる。
広瀬社長は両議会の全員協議会に出席し、8日に施行された原発の新規制基準が義務付ける「フィルター付きベント(排気)装置」の設置計画のほか、津波の高さ想定の引き上げなど新たな安全対策について説明した。議員からは「早く申請すべきだ」との意見も出たが、東電の対応に対する不満の声も上がった。
ある柏崎市議は「東電が副社長を地元にはりつけ、意思疎通や連携を図れないのか」と要望。刈羽村議からは「(申請方針の決定は)突然だ。今後の信頼回復に向けた方策はどうするのか」との声があった。
広瀬社長が新潟へ説明に訪れるのは今月5日に続き2回目。前回は泉田知事に加え柏崎市の会田洋市長、刈羽村の品田宏夫村長と面会した。泉田知事は東電が申請方針の発表後に新潟を訪問したことに反発し、排気設備の運用方法や設計についても申請前に地元の了解を得るよう主張。申請と同時並行で進めたいとする広瀬社長と物別れに終わった。
広瀬社長は「リターンマッチしたい」として再会談を申し入れたが、調整がつかないまま泉田知事は16日から米国やブラジルへの外遊に出発。東電は事務方を通じて調整を試みているが「(県側も)知事の考えが読めず、議題の整理が進まない」(東電幹部)状況で、帰国する22日まで進展は見込めそうにない。
原発の安全審査を巡っては既に北海道、関西、四国、九州の4電力が申請済み。23日に開かれる2回目の安全審査会合では遅れて申請した九電の玄海原発も含めた本格審議が始まる。審査が後回しになり再稼働が遅れる事態を避けたい東電は、大幅に審査が遅れないメドとされる7月中には審査を申請したい考えだ。
今後は政府の出方も焦点になる。安倍晋三首相は5日のBSフジ番組で「(地元に)理解をしてもらえるよう国も努力していきたい」と話したほか、甘利明経済再生担当相も16日に泉田知事の面会要請に応じる考えを示した。政府と新潟県の溝を埋める作業も柏崎刈羽原発の再稼働を占うカギになりそうだ。
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