卵子提供、子にどう告知 家族「支援ないと不安」
病気で卵子がない女性が姉妹から提供を受け、夫の精子との体外受精で子どもをもうける。こうした不妊治療現場の取り組みをめぐり、子どもの出自を知る権利をどう保障すべきか議論が起きている。子どもを得た親への意識調査では出自を知る権利を肯定的に捉える一方、実際にはなかなか告知できずに悩む姿が浮かび、親をサポートする仕組みが求められる。
27の不妊治療施設でつくるJISART(日本生殖補助医療標準化機関)は2008年に卵子提供の指針を策定。現在5施設が実施しており、14年末までに23人が誕生した。ほとんどは姉妹からの提供という。
調査は09年以降に生まれ、生後6カ月と2歳を迎えた子どもの親を対象にJISARTが実施しており、これまでに双子や兄弟を含め子ども12人の両親20人が回答した。生後6カ月と2歳の2度の調査に答えた両親もおり、回答者は延べ26人。
「子どもは卵子提供によって生まれたことを知る権利がある」との考え方に「とてもそう思う」との回答は50.0%、「半分くらいそう思う」が30.8%。「全くそう思わない」と答えた人はゼロ。
子どもが卵子提供者を特定する情報を知ることが最も利益になると考えている人は、「とてもそう思う」と「半分くらいそう思う」を合わせると65.4%だった。
実際に子どもに告知を済ませたのは1家族のみ。「乳児なので理解していないだろうが、何度も話を聞かせている」という。
ほかの家族からは「告知を考えているがいつ、どうしたらいいのか」「告知後のサポートがないと不安だ」といった意見が出された。全員が提供者やその家族と交流し、良好な関係を続けていた。
調査に携わった国立成育医療研究センターの研究員、小泉智恵さん(46)は「告知には社会の後押しが大事。多様な家族の形を認め、すべての子どもの成長を温かく見守る社会にすべきだ」と話した。〔共同〕