放射性物質強奪の2人、危険な状態に被曝か メキシコ
【ロサンゼルス=共同】メキシコ市近郊で3日、医療用の放射性物質「コバルト60」を積んだトラックが2人組の男に奪われた。トラックは4日に見つかり、近くで高い放射線量が検知された。男らが密封容器を開封した後、放射性物質を捨てたとみられる。メキシコの原子力規制当局者が明らかにした。
この放射性物質は近くにいる人が数分で死亡する恐れがあり、男2人は危険な状態まで被曝(ひばく)したとみられる。当局は2人の行方を捜すとともに、現場から持ち去られた放射性物質がないか確認を急いでいる。
放射性物質は病院でがんの放射線治療に使用されたもの。放射性廃棄物の管理施設への搬送中に奪われており、安全管理の課題が露呈した。
トラックは奪われた場所から約40キロの地点で発見され、放射性物質の容器は開封されていた。そこから1キロほど離れたところで高い放射線量が確認された。
トラックの運転手が3日未明、ガソリンスタンドに止めた車内で仮眠中、銃を持った2人組の男が近づきトラックごと強奪。2人は積み荷ではなく車両を狙ったとみられる。AP通信などによると、奪われた物質は放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」の材料になる。
コバルト60は人工的に生成される放射性物質の一種で、がんの治療や工業製品の非破壊検査などに使われる。タイでは2000年、放置された医療器具に含まれていたコバルト60が原因で住民が被曝し、3人が死亡した。