大飯再稼働なお関門 敷地地下構造は追加調査
原子力規制委員会は5日、関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県)の再稼働に向けた安全審査を再開すると決めた。施設の真下に活断層があるとの疑いが浮上し審査は棚上げ状態になっていた。関電が期待する今冬の再稼働に一歩前進した形だが、同原発はほかにも課題を抱えている。審査の先行きはなお見通せない。
今年7月に安全審査を申請した4電力会社の6原発のうち、大飯の審査は最も遅れていた。3、4号機の非常用取水路の真下に、地盤のずれを引き起こす活断層があるとの疑いが浮上。規制委はこの疑いに「一定の見解」がまとまるまでは審査に着手しないとの方針を示していたからだ。
外部有識者を交えた規制委の調査団は2日に「活断層ではない」との意見で一致。規制委は「方向性は固まった」(田中俊一委員長)として審査を再開する方針を決めた。原子力規制庁は来週から、審査再開に向けた関電への聴取作業に着手する。
審査はどう進むのだろうか。国内で唯一稼働中だった大飯3、4号機は4~7月に新規制基準に基づく事前評価を受け、安全面で規制委から一定のお墨付きを得ている。関電社内からは「活断層さえ決着すれば長い時間はかからないのでは」との楽観論も漏れる。
現実にはそう簡単ではない。最大の関門は「敷地の構造がきちんと調査されていない」(規制委の島崎邦彦委員長代理)点だ。
新たな規制基準は、地震の揺れを増幅する特殊な地下構造が原発の下にないかを詳しく調べるよう義務づけている。大飯原発は十分なデータを測定しておらず、事前評価では同じ福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」のデータを借用して説明した。規制庁幹部は「まったく見当違いの説明。追加調査を求める」と楽観論にクギを刺す。
もう一つの課題は耐震評価に影響を与える地震の想定。規制委は敷地周辺の3つの断層が連動することを想定して揺れの大きさを見直すよう関電に求め続けており、関電の出方次第では審査が難航する可能性がある。
審査が順調に進んでいる四国電力の伊方3号機(愛媛県)などでは来週以降、規制庁職員による現地視察が始まる見通し。出遅れた大飯原発が追いつくのは簡単ではなさそうだ。