金利1%上昇で銀行の損失6.6兆円 日銀が試算
金融システムレポート
日銀は17日、金融システムの現状や見通しをまとめた「金融システムリポート」を公表した。国内の金利がすべての年限で1%上昇した場合、国内の銀行が保有する債券の評価額が6.6兆円減ると試算。2%上昇すると12.5兆円、3%上昇すると16.6兆円の減少になると分析したが、その程度の金利上昇であれば、銀行の自己資本に深刻な影響は出ないとの見方を示した。
試算は大手銀行と地域銀行の合計。長期金利が上がる一方、短期金利があまり上がらない場合も試算した。その場合、長期金利が1%上昇した場合は3.6兆円、2%では4.9兆円、3%では7.8兆円の減少になると見込んだ。
貸し付けなどの利回りで得られる資金利益の変化も算出した。長期金利のみ上がる場合は、金利の上昇幅にかかわらず、評価損を上回って資金利益が改善する。
一方、金利が全般的に2~3%ずつ上がる場合は、評価損が資金利益の改善幅よりも大きくなる計算になった。2%の上昇では海外業務を手がける国際統一基準行の自己資本比率(ティア1)を0.7ポイント、3%の上昇では1.1ポイント押し下げる。いずれの場合も「自己資本基盤が大きく損なわれることはない」との見解も示した。
リポートは年2回まとめている。前回は具体的な損失額は金利が全般的に上昇するケースのみ記していた。ただ市場からは「日銀が大規模な金融緩和を実施するなか、短期金利も上がるケースは想定しにくい」との指摘があり、2つの場合に分けて分析した。
市場では「影響をより細かく分析することで、金利上昇の現実味がより高まっていると警告する効果がある」(みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミスト)との指摘が出ている。