日韓外相会談、「歴史認識」で互いの立場主張
【ニューヨーク=秋山裕之】訪米中の岸田文雄外相は26日午後(日本時間27日未明)、ニューヨーク市内のホテルで韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と会談した。日本産水産物の輸入規制や従軍慰安婦問題で互いに自国の原則的な立場を主張し合った。
岸田氏は元戦時徴用工による損害賠償の請求訴訟について「請求権問題は解決済み。韓国政府は適切に対処すべきだ」と促した。尹氏は係争中を理由に立ち入った説明は避けた。岸田氏は汚染水問題を理由とした韓国の日本産水産物の輸入規制強化に関して「科学的根拠に基づき、ただちに撤廃すべきだ」と主張した。
尹氏は冒頭で「過去の傷を治癒しようとする勇気あるリーダーシップの発揮を期待する」と歴史問題での対応を求めた。「韓日両国の国民が真実の心で行動し、互いに信頼を築き上げられるよう心から望む」とも語った。旧日本軍による従軍慰安婦問題での対応を求め、岸田氏は日本側の立場を説明した。岸田氏からは島根県・竹島問題を提起し、双方が領有権を主張した。
両外相は今後も様々なレベルで意思疎通を図ることでは一致した。安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領による首脳会談については、岸田氏は会談後「何も決まっていない」と記者団に語った。
尹氏は会談で2020年東京夏季五輪の決定について祝意を伝達。18年に韓国の平昌で冬季五輪で開催することに触れ「2つの五輪成功に向け互いに協力することを望む」と呼びかけた。岸田氏は謝意を示し、平昌冬季五輪を控える韓国と協力する考えを伝えた。東京とソウルで開いた両国の交流イベントが盛況だったと指摘し「両国民の強固なつながりを支えとして、ぜひ2つの国の関係を進めたい」とも述べた。
会談は当初の予定を上回り、約50分間に及んだ。議題に予定した北朝鮮問題に関しては時間が不足し、連携を確認する簡潔なやりとりにとどまった。両外相の会談は7月のブルネイでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議以来、2度目。