汚染水データ集約 規制委、海洋調査を強化
原子力規制委員会は東京電力福島第1原子力発電所から汚染水が流出した恐れのある周辺の海域で放射性物質の監視を強める。関係省庁や東電、地元自治体が放射性物質の濃度をばらばらに調べていた体制を改め、規制委がデータを集約する。できるだけ正確な情報を国内外に示し、風評被害の払拭を狙う。
13日に開いた規制委の有識者会合で、水産庁などが海水や海底の土などに含まれる放射性物質の濃度を報告した。7~8月に採取した水産物のうち濃度が市場に出回る際の基準値(1キログラムあたり100ベクレル)を超えるのは福島県沖で取った総数の2.7%、福島以外では0.4%で下がる傾向にあるという。1年前は福島が12.8%、福島以外は1.6%だった。
規制委の中村佳代子委員は「事故直後から確実に(数値が)下がっている」と述べ、不安は小さいとの見方を示した。汚染水は薄まって検出されていないとみられる。有識者から「測定が不十分」との声も上がった。
これまで海の状況は東電が原発から20キロ圏内を調べ、圏外は福島県などが別々に調査していた。ただ、線引きは不明確な面もあり、今後は情報収集と管理を規制委がまとめて担う。汚染水の拡散を防ぐための「シルトフェンス」と呼ぶ水中カーテンの状況や港湾内外の水の出入りも調べる。
六ケ所再処理工場(青森県)や国内外の原子力施設では、トリチウム(三重水素)を含む水を海に放出している。福島第1原発でも汚染水を処理して海に流す案が浮上しているが、処理装置は動いていない。監視を強める背景には、トリチウム水を放出した際の影響を確かめる狙いもある。
一方、経済産業省は13日、汚染水の漏洩を防ぐ対策を電力会社やメーカーと共同で検討する体制を固めた。9月中に追加策を募るためのウェブサイトを開設し、海外の知見を集める。対策の司令塔は8月に電力会社やメーカーなど17法人が立ち上げた「国際廃炉研究開発機構」(IRID、東京・港)。原発の廃炉や汚染水問題に精通する人材を集め、東電や官僚主体の体制を改める。
政府は原子炉建屋への地下水の流入を防ぐ凍土方式の遮水壁の設置などを決めているが、対策がうまくいかなかった場合のリスクを9月中に洗い出して公表する。その後、IRIDが新たな対策で内外の知見を集め、経産省の有識者委員会と共同で年内に追加対策の全体像を提示する。
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