原子力損害賠償、移転先での必要額を基準に 指針見直し着手
文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は1日、東京電力福島第1原子力発電所事故の賠償指針の見直しに着手した。移転先での土地や家屋の取得に必要な額を基準にして賠償や国の支援を上積みする方針を示した。被災地の生活再建を加速するため、新しい賠償指針を年内にとりまとめる。
審査会は、新たな家屋を購入できない場合の賠償額の上積みを優先的に議論する。能見善久会長は記者団に「他の場所での生活を余儀なくされることでかかる損害(の賠償)は、恩恵的な救済とは違う。賠償の増額の方向で考える」と述べた。
東電の賠償基準では事故前まで住んでいた家の価値を基準に賠償額が決まる。元の家屋が古いと移転先で新しい家屋を購入したり、建て替えたりする費用を賠償金でまかなえない場合もある。こうした問題に対応して政府の支援策の拡充を提言することも検討する。
避難指示が6年以上に長期化した場合の避難費用や精神的損害なども見直しの対象とする。審査会は5月と6月に現地を視察し「地元の実態に即した対応を」と要望を受けていた。自治体から要請のあった原発事故後の自治体の税収減への対応は年内の見直しには盛り込まず、継続的に協議する。
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