朴大統領「未来志向で日韓協力を」 麻生氏と会談
竹島問題など懸案言及なし
【ソウル=藤田祐樹】麻生太郎副総理は25日、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と青瓦台(大統領府)で約25分間、会談した。両氏は北朝鮮の核問題を踏まえ「北東アジアの平和には日韓の協力が大事だ」と述べ、未来志向の関係構築へ緊密に協力すべきだとの認識で一致した。大統領は「未来志向の協力のためにも歴史認識が重要だ」と安倍政権の姿勢に注文をつけた。
韓国の聯合ニュースによると、大統領は副総理に「韓日間の真の友好関係構築のためには歴史を直視し、過去の傷がこれ以上悪化せずに癒えるよう努力し、被害者の苦痛を心から理解しなければならない」と述べた。
会談では島根県・竹島(韓国名・独島)の領有権問題や従軍慰安婦問題などへの言及はなかった。大統領は「若い世代が未来志向で前進できるように今の世代が協力していきたい」と語った。副総理は「お互いの立場を理解することが重要だ」と答え「民主主義や法の支配など共通の価値観を有する大変重要な隣国同士だ」と強調した。
安倍晋三首相は5月ごろにソウルで開く予定の日中韓首脳会談にあわせ、大統領と初の首脳会談をする考え。ただ、竹島問題や従軍慰安婦問題など対立の火種はくすぶったままだ。
自民党は衆院選公約の政策集に「政府主催の『竹島の日』を祝う式典の開催」を盛り込んだ。今年は政府主催の式典は見送ったが、韓国側は22日の島根県主催「竹島の日」式典への内閣府政務官派遣に反発した。
首相が1993年に河野洋平官房長官(当時)が発表した旧日本軍による従軍慰安婦の強制連行を事実上認めた「河野談話」の踏襲を明言していないことも、韓国側の不信を招いている。
大統領は就任前の1月初めに首相特使として訪韓した額賀福志郎元財務相との会談でも「歴史を直視しつつ融和と協力の関係をつくっていきたい」と表明。周辺は「慰安婦問題への関心は高い」と指摘する。日本の教科書検定や、4月上旬に公表予定の外交青書の竹島の記述次第で、韓国側が再び硬化する可能性もある。
経済関係でも不協和音が高まる。日韓経済連携協定(EPA)の交渉は中断したまま。21日に発表した朴大統領の国政ビジョンでは中韓、日中韓の自由貿易協定(FTA)推進を掲げたが、日韓EPAには言及しなかった。
日韓両国の大手企業は近年、資源開発や中東でのプラント建設で協力する例が増えている。ただ自動車や鉄鋼など韓国の基幹産業に関して、日韓の競合は年を追うごとに激化。足元では「アベノミクス」で進む円安・ウォン高と同時進行で韓国勢が相対的に不利な状況に追い込まれ、国内企業の不満の声が漏れる。
足元の対ドルのウォンレートは直近の安値の昨年5月末に比べ1割弱上昇。現代自動車は輸出採算の悪化で2012年10~12月期の連結営業利益が前年同期比12%減った。造船大手の現代重工業の連結営業利益は同94%減だった。