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ベトナムで即席麺1位 エースコック市場攻略の極意

進出20年、中間層に異色商品で先手

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ベトナムの即席麺市場でシェア6割を握るエースコック(大阪府吹田市)が、進出20年目を迎え新たな成長戦略の一歩を踏み出した。狙いを定めるのは消費の主役に躍り出た中間層だ。嗜好の多様化に対応しつつ、現地では異色な味わいの商品も果敢に投入。競合企業の一歩先を行く高付加価値・ブランド戦略と販促・物流にわたる改革でベトナムの地盤を固め、東南アジア全域の市場攻略に弾みをつける。

ノンフライ麺や「ウドン」、高価格品で手応え

ベトナムの首都、ハノイ市の食品スーパーに多くの客が立ち止まる一角がある。店頭販促(POP)には「ミコチはミー・ホン・チエン(油を使わない麺)」と表記。「ミコチ」は昨年7月、エースコックが投入したノンフライ袋麺の名前だ。

油で揚げないノンフライ麺はベトナム流に湯戻しで食べる時、もちもちと生麺風の食感になる。現地ではまだ珍しく、価格は6500ドン前後(約29円、1万ドン=約45円)と他の商品の倍近いが、市内では発売4カ月で数%のシェアを確保した。

ベトナムの2011年の即席麺消費量は年間49億食と世界3位の日本(55億食)に迫る。だが同年以降、金融引き締めで経済成長が鈍化。2桁が続いた小売市場の伸びは11、12年は1桁だった。即席麺市場も11年の伸びが前年比1.7%増と過去最低。00年に当時1000ドンで発売した袋麺「ハオハオ」で急成長したエースコックは販売量が進出後初めて減った。

「成長の持続には新しい戦略が必要だ」。12年、現地法人エースコックベトナム(ACV)の梶原潤一社長は商品政策の改革に踏み切った。まず31ブランド、150種類あった商品を、昨秋までに26ブランド、107種類に絞り込んだ。

景気変調に身構える低所得層などに対しては、より「安さ」を訴える商品の強化が必須。そこで力を発揮するのが、昨年稼働させた同国有数の先端工場であるホーチミン第2工場だ。包装工程などを機械化し、コストの削減を実現した。

【エースコック】 1954年にビスケット製造販売の梅新製菓として設立し、59年に即席麺の製造を始めた。64年にエースコックに社名変更。大盛りサイズ「スーパーカップ1・5」シリーズや「スープはるさめ」などユニークな商品開発に定評がある。ベトナム進出は取引先である丸紅の誘いがきっかけ。2012年12月期の連結売上高は877億円。国内の即席麺市場のシェアは7・7%で第5位(11年度)。

一方「量から質へ」を合言葉に高付加価値品の開発に着手。これで「価値あるものにはお金を惜しまない」中間層の攻略を狙う。世帯の可処分所得が年間5000~3万5000ドルの消費者は11年時点で2400万人。20年には4600万人に膨らむ。「ミコチ」のような個性的な商品の需要は確実に増えるとみる。

中間層の生活様式をにらんだ新商品もある。ベトナムでは朝・昼に自宅や会社に持参した器で袋麺を食べるのが一般的。だが都市生活者向けのコンビニエンスストアが登場し、手軽なカップ麺の需要増が予想される。そこで昨年4月、現地では珍しい具だくさんのカップ麺「エンジョイ」を発売。1万8千~2万ドンと通常の約3倍の価格で高級感を打ち出した。

生活が豊かになり嗜好も多様化した今は新しい味に挑むチャンスだ。昨年9月にはハノイ市とホーチミン市で和風だしの即席うどん「ウドン・スキスキ」を無料配布。現地の消費者になじみがなく、視覚的にインパクトのあるうどんで新しい需要の創出に挑んだ。

ベトナムで一般的な麺のスープだしは牛や鳥。「ベトナム人は和風の魚だしを受け入れない」との声もあった。だが消費者調査で得た好反応を頼りに投入したところ「店頭での回転は予想以上」(梶原社長)という。

「エースコックは少し高いけど特徴的だし品質がいい。最近はミコチとウドンが好み」。同社の即席麺を毎週20袋買う女性会社員(36)は語る。

昨年17.7%だった高価格帯品でのシェアは13年に31.1%を狙う。同国特有の口コミを利用して認知度を高めようと路上試食会やサンプル配布も相次ぎ実施している。

高付加価値品が定着すれば、日本で開発した商品をアレンジして拡販する道が開ける。実際、中間層には健康志向など日本同様の意識が高まり、マーケティングの応用範囲が広がっている。若年層向けには日本のヒット商品「スープはるさめ」の投入も検討中だ。

ただし中間層を狙うのは同業者も同じ。地場メーカーが相次ぎ品ぞろえを広げ、昨年ベトナム工場を竣工した日清食品ホールディングスもノンフライ麺を同7月に発売、テレビCMを大量投下しブランド定着を急ぐ。

市場が変容し始めた今は各社がスタートラインに一線に並ぶ状況、と梶原社長はみる。新ブランド投入と並行し販売体制の磨き直しを急ぐ。

物流・営業に磨き 調達から販売、一括で管理

24万の小売店と350の代理店、10工場、原材料・資材業者らを情報ネットワークでつなぎ、調達から販売まで一括管理する。そんなサプライチェーンマネジメントを実現するACVの「物流高度化計画」が始動した。完成予定は14年9月末。20年間で築き上げた流通網や営業活動をさらに磨き上げるのが目的だ。

完成後は店頭での販売状況や在庫をリアルタイムで確認しながら原材料や資材を調達して製造できる。工場や代理店の在庫が適正化し、店頭には常に鮮度の高い即席麺が並ぶ。もちろんコスト削減効果も見込める。

ベトナムの小売市場の主役はいまだ「パパママストア」でPOS(販売時点情報管理)システムもなく、メーカーは「売りっぱなし」が一般的。そのなかでエースコックはきめ細かい日本流の営業活動を展開し、同国最大の販売網を築いた。

進出当時に提携した国営食品企業ビフォン社の営業網を土台に代理店を決め、専属営業マンを配置。売り場に出向き、陳列方法の指導や欠品状況の確認をした。これで店主の信頼を勝ち得た。

調達面では原材料の現地サプライヤーに製粉技術などを直接指導し品質を改善。当初は輸入に頼っていた小麦などを現地調達に切り替えることに成功した。その結果、現地メーカーより3倍ほど高かった商品価格を引き下げられ、同社の即席麺が爆発的に普及した。

こうして整えた営業・調達網の水準向上へ同社を駆り立てるのは、やはり市場の変化だ。ベトナムでは店頭の商品が売り切れて棚が空くと「さっさと他社商品を置かれて機会ロスが膨らむ」(村岡寛エースコック社長)。競合商品が増えればそのリスクが一段と高まる。トップ企業でも気を緩めていられない。質の高い原材料、商品を切れ目なく調達・供給し続けるネットワークの強化は、新たな成長軌道を描くために不可欠といえる。

周辺国開拓へノウハウ活用

「これがミャンマーで好まれる味か。麺もベトナムと微妙に違うなあ」。昨年9月、ヤンゴン市には現地の小売店などを精力的に視察するACV幹部らの姿があった。

エースコックは12年12月期に連結売上高の4割強、営業利益の6割を海外で稼いだ。ベトナム工場からは47カ国に約3億食の即席麺を出荷する。

特に力を入れるのがベトナムと市場特性が近い東南アジア諸国連合(ASEAN)の後発国だ。02年にカンボジア、08年にラオスに支店を開設。11年春にミャンマーでもテスト販売を始めた。

タイやインドネシア、マレーシアに比べ、後発国は競合相手が少なく参入障壁も低い。また、ベトナム産加工食品が普及しており、現地在住のベトナム人を通じて流通させやすい。ここにベトナムで培ったノウハウを活用して攻勢をかける。

カンボジアとラオスでは商習慣や味覚に精通する現地社員も採用。市場シェアは両国とも2~3割になった。徹底した「現地化」はベトナムで学んだ鉄則だ。ACVの従業員約5700人のうち日本人は13人。成果主義で工場長など管理職を現地社員に任せる。即席麺開発もマーケティング本部副本部長のチャン・ティ・ホン・リン氏ら現地の45人が担う。

一方、大阪の本社と連携した「日本発」商品の輸出強化も急ぐ。日本の高付加価値商品をベトナムで生産し、アジア市場に拡販する試みだ。ここでは「日本ブランドを強調する」(村岡社長)。

アジア攻略の次なる課題は他国での現地生産。ACVに出資する丸紅の協力に加え、現地資本との提携が前提となりそうだ。条件は「全権の委任」と梶原社長は話す。

ベトナムでは進出時、ビフォン社に物流からマーケティングまで全てを委任され「白紙に絵を描けたから成功した」。だが同時期に進出した中国では提携先が主導権を握り、ブランド管理もままならず数年で撤退した。今後のアジアでの業容拡大に際しては、現在も蓄積し続けているベトナムの教訓を生かし切る。

(ハノイ=伊藤学、小国由美子)

[2013年3月15日付 日経MJ]

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