小型高級車で欧州勢追撃 独自動車ショー開幕
若い世代を開拓
【フランクフルト=田中暁人】フランクフルト国際自動車ショーが10日開幕した。欧州販売に回復の兆しが見え始めたなか、各社は小型高級車などの投入で需要を喚起する。日産自動車は高級ブランド「インフィニティ」で初の小型車を公開。トヨタ自動車も高級ブランド「レクサス」で小型ハイブリッド車(HV)を出展し、先行する独BMWなど欧州車を追い上げる。
自動車各社は欧州新車需要の回復を見越して、戦略車の投入を急ぐ考え。今回のショーでは若者に人気の小型高級車の出展が相次いだ。収益性が高く、新興国でも需要増が見込めるため各社は重点分野と位置付ける。
日産は高級車ブランド「インフィニティ」で初となる小型車「Q30」のコンセプト車を公開した。5ドアのハッチバック車で、2015年から英国で生産し欧米などで発売する。「中国生産も検討中」(同社幹部)という。独フォルクスワーゲン(VW)傘下の独高級車アウディ「A3」の対抗モデルだ。
日産でインフィニティ事業を統括するヨハン・ダ・ネイシン常務執行役員は「Q30はインフィニティの入門車として若い世代の開拓を進める」と意気込む。同社はインフィニティの世界販売台数を16年度までに12年度実績の約3倍の50万台に引き上げる計画だ。
トヨタ自動車はレクサスの巻き返しを狙う。同ブランドの1~6月の欧州販売は前年同期比3割減と苦戦。同社は4月から豊田章男社長がレクサス事業を直轄する体制にして立て直しを急ぐ。
挽回策の一つが今回発表した小型多目的スポーツ車(SUV)のコンセプト車「LF-NX」で主力SUV「RX」よりも一回り小さいHV。発売時期は未定だが世界戦略車との位置づけだ。
欧州車メーカーも高級小型車は主戦場とみて品ぞろえを増やしていく。独ダイムラーは主力ブランド「メルセデス・ベンツ」の新小型SUV「GLA」を出展した。「Aクラス」などに続く4車種目の小型高級車となる。価格は2万9千ユーロ(約380万円)。来年3月に欧州で発売し、15年には中国で生産を始める計画だ。「初めてベンツを購入する顧客層が狙いだ」(ディーター・ツェッチェ社長)
小型高級車で先行したBMWもSUV「X5」の新型モデルや、来年発売予定のプラグインハイブリッド車(PHV)のスポーツカーを展示した。アウディもSUV「Q3」などの新モデルを発表した。米フォード・モーターは中型車「モンデオ」をベースに高級感を演出したコンセプト車を出展し欧州車の切り崩しに挑む。