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放射線・高温・暗闇…災害に負けない「万能ロボット」 今夏実用化へ

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東日本大震災から2年。日立製作所や三菱重工業、大学発ベンチャーが災害復旧時の無人ロボットシステムを連携して開発、東京電力福島第1原子力発電所への配備を目指している。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導、これまで各企業などがバラバラに取り組んできたロボット技術を事故現場のニーズを取り入れながら形にした。

通信やロボットを操縦するインターフェースを共通化することで、遠隔地からでも各企業のロボットが連動して建屋内の調査や作業ができる工夫をもりこんだ。「福島第1原発に今夏から順次投入したい」(NEDOの久木田正次技術開発推進部長)といい、現場での早期の導入が期待されている。

各社のロボットが連携

幅70センチメートル、傾斜42度の急な階段を、千葉工業大学発ベンチャー、移動ロボット研究所(千葉県習志野市)の小型探査ロボット「櫻(Sakura)」が駆け上った。ロボットに搭載された小型カメラで建屋の上部に取り付けられたバルブを撮影、離れた場所から作業員が三菱重工のアームロボ「MHI―スーパージラフ」を操作し、アームが手際よくバルブを開けると、白い蒸気が配管から吹き出された。わずか数分の間で、建物内に人が全く入らずに作業を終えた。

三菱重工が開発したアームロボ「MHI-スーパージラフ」は8メートルまでの高さで作業員の代わりに作業ができる。三菱自動車のEV(電気自動車)用バッテリー技術や四輪駆動の技術を応用、狭い場所でも小回りがきく作業用ロボを今回のプロジェクトのために独自に開発した。今後、一部の技術を公開、先端につける工具を他社と共同開発することで、より幅広い用途で使えるようにするという。

先月、NEDOは千葉工大の敷地内で「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」の開発成果を披露した。場所は、福島第1原発での作業を想定して建てられた鉄筋の建物。同プロジェクトは2012年2月から今年2月までの1年間、約10億円の予算で開発が進められてきた。現場の状況をいち早く把握、機材などを運搬、復旧作業を支援する無人化システムの開発が狙いだ。原発事故直後、最初に現場調査のため投入されたのは米国製ロボット。千葉工大の探査ロボット「クインス」が投入されたのは2カ月遅れの12年6月だった。事故に備えた原子力用の「日本製ロボット」は日本の原発の安全神話が根強く、事故直後に実際に活躍する機会を与えられなかったという経緯があった。

「オールジャパン」で技術を結集

今回のプロジェクトについてNEDOの古川一夫理事長は、「ロボット業界はこれまで連携が難しいところがあったが、震災を機に組織の壁を越えてオールジャパンで1つになってやろうではないかという機運となった。産業界の総力、最高水準のポテンシャルを結集したからできた」と振り返る。福島第1原発で燃料棒の取り出しや原子炉や建屋の解体・廃炉のために実用化されることに加え、自然災害や産業施設の事故といった「次に来る災害・事故」にも役立つことも目標として掲げられている。

 プロジェクトを統括してきた東大の浅間一教授は「これまで政府主導などのプロジェクトでも現場に入れるまで面倒を見てくれることがなかった。今回は、『現場至上主義』で開発、実用化できた」と明かす。プロジェクト開始当初の昨年の4~6月、東電の現場作業員も交えロボットを含むシステム全体のデザインレビューが始まった。経済産業省は日立や東芝などのプラントメーカーや外部有識者からなる委員会を立ち上げ現場作業員からの聞き取りを進めてきた。その後も、各社や各大学が個別に福島第1原発の現場からのニーズをくみ取り、現場に即してロボットの仕様変更などを進めてきた。福島第1原発に特化して開発したが、浅間氏も「火事やコンビナート事故などにも応用できる」と期待する。まさに、産学官が連携した「オールジャパン」での取り組みだ。

「日本流」新たな広がりも

「欧米は高度な軍事技術が民生品に応用されている。介護や医療で培われた最先端の技術を、原発や宇宙分野に応用するという『日本流』の新しい広がりが期待できる」と話すのは筑波大発ベンチャーのサイバーダイン(茨城県つくば市)の山海嘉之最高経営責任者(CEO)。今回のプロジェクトでは、介護現場などで人の動作を支援するロボットスーツ「HAL」を福島第1原発の事故現場で働く作業員向けに改良した。

成果発表会では、ロボットスーツを装着したサイバーダインの開発担当者が階段を上り下りしたり、スーツケースなどを持ち運びしたりする様子が披露された。同ロボットスーツは人の動きに合わせて関節部のモーターが作動、荷物を持っても全く人に負担がかからないような機構を持つ。放射線の被曝(ひばく)量を抑えるため、タングステンなどの素材を使った防護機能を付けた。夏場や密閉空間など過酷な状況でも作業できるようスーツの中に冷気を送風する構造で、胸に付けたセンサーで心拍、体温などをモニターで確認、常に作業員の体調を監視できるようにもした。

同ロボスーツは、福島第1原発の作業員に装着してもらいながら開発。現在、災害対策用は1台のみだが、今月中に10台ほど製作し現場での実証実験を続けていく予定だ。2月末には、生活支援ロボット「HAL」が国際安全規格を取得。山海氏は、「自動体外式除細動器(AED)と同じように何かあったときにすぐに使えるようにしたい。災害時は初期対応が非常に重要で街中に広くHALが配置されることが理想」と語る。医療や介護の現場で民生用として量産されればよりコストも下がり、より幅広く活用される可能性も広がっている。

共通の通信基盤でロボット制御

福島第1原発1~3号機建屋内は、「地下も含め局所的に放射線量が高い場所があり、詳細にどの箇所が放射線量が高く、その原因は何かを把握することが難しい」(東電)状況だ。そうした過酷な環境下でも各社のロボット技術を存分に生かすため、「各企業のロボットなどの技術仕様を統一、複雑なミッションを達成できるようにした」(NEDOの久木田氏)ことが今回のプロジェクトの特徴だ。日立は、各ロボット装置を安定的に制御・操作できる無線通信システムを開発。異なる2種類の周波数を切り替えて通信することができるため一方の通信環境が切断されてもバックアップできるようになっている。無線通信中継局と通信装置を各ロボットに搭載して使う。

各ロボットを遠隔操作するための共通インターフェースは東芝が担当。作業員が簡単に操作できるように、ゲーム用の操作装置を使った。同社の画像処理技術も応用、ロボットの前後左右にとりつけた魚眼カメラの画像を合成し真上からロボットの周りの画像を生成できる「全方位俯瞰(ふかん)画像」で周囲の障害物などをよけたりすることができる。

 また東芝は、陸上や水中で移動できる装置も担当。水に漬かってしまった場所でも液体が漏れている箇所を調査・特定できるよう流速計や超音波カメラと水中カメラを搭載し、破損状況を特定できる。原発建屋内では、水に漬かっている地下で格納容器や、配管などの損傷、冷却水漏洩箇所などを特定することが期待される。「地下街での災害などにも応用できる」(東芝の原子力システム設計部の湯口康弘氏)という。

ホットスポット可視化や操縦訓練システムも

災害現場の状況を遠隔地から把握できる技術も確立した。日立は毎時300ミリシーベルトといった高い放射線量の場所でホットスポットの位置を確認できるガンマカメラを開発。移動ロボット研究所が開発した小型移動装置「椿(Tsubaki)」に搭載して建屋内の狭い場所でも機動的に動き回り、線量の計測を無人でできる。

千葉工大は、レーザースキャナーやサーモグラフィーなどで収集したデータを処理する技術を開発。パソコンの画面上で3次元で実際の現場の温度などを可視化できるようにした。加えて、災害用ロボットの操縦訓練シミュレーターも開発。現場の作業員がパソコンの画面上でロボットの階段の上り下りや段差走行などの操縦訓練が繰り返しできるようになる。これまで手間と時間がかかっていた充電や除染などに対応するため、ロボットを自動で充電・洗浄できる遠隔除染システムなども開発した。

NEDOの古川理事長は、「日本のロボット技術は世界最高といわれて久しい。産業用ロボは文字通り世界最高だが、災害用、生活支援、介護という視点でみるとまだ十分でない。産業界の総力を結集させてロボット技術の競争力強化を図りたい」と期待する。

ただ、福島第1原発の事故現場では廃炉処理を始め、難題が山積している。東電は2月、福島第1原発1号機の非常用復水器(IC)付近の調査のため、作業員が建屋内の一部放射線量を調査、一番高い場所で毎時45ミリシーベルトだったことを発表した。建屋内には10分~1時間程度しか入ることができず、計測場所も限定されているのが現状だ。

政府と東電は福島第1原発の廃炉作業に今後30~40年という時間がかかると試算している。現場のニーズをくみ取りながらの開発とは言え、実際の活躍は未知数だ。プロジェクトの前に開発、投入されたロボットでも立ち往生したり、ロボットのアームが動かなくなったりするなどのトラブルが発生している。

 しかし、作業員の安全確保や作業負担の軽減には、無人で線量を計測したりがれきの撤去を支援したりするロボットの活躍がこれまで以上に求められていることは明らかだ。

プロジェクトをとりまとめてきたNEDOの久木田氏は、「実際に新しいロボット技術の受け入れは、東京電力などの決定次第だ。一刻も早く現場に投入、活躍することが求められており、これが研究の終わりということでなく今後もしっかりとフォローしていきたい」と期待する。今回、開発された無人ロボットシステムの活躍の可能性を、東電の広報部担当者は「操作性を含めて、今後現場で使えるものなのかどうかを検討する」と話す。技術がありながらも、事故現場での活躍が限られていた日本製の原発ロボット。国の予算10億円を投じ、産学官が連携してつくりあげた「万能ロボット」の活躍に注目が集まっている。

(電子報道部 杉原梓)

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