集団的自衛権の行使、再検討を指示 首相
政府は8日、第1次安倍内閣で集団的自衛権の行使について検討した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二国際海洋法裁判所所長)を再開、初会合を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は「安全保障環境の変化を踏まえ、日米安保体制の最も効果的な運用を含め何をすべきか議論してほしい」と行使容認に向けた再検討を指示した。
懇談会は第1次安倍内閣の2007年に設置。柳井氏や座長代理に就いた北岡伸一国際大学長ら当時と同じ13人で再開した。初会合には11人が出席し、前回まとめた報告書を首相に提出、新しい安全保障環境を踏まえた議論に入った。
会合で首相は「北朝鮮やイランの核活動の動きは止まらず、地球的規模のパワーシフトが顕著だ。東シナ海や南シナ海の情勢も変化しており、日米同盟の責任はますます重くなっている」と強調した。
集団的自衛権の行使で日米同盟の強化を目指す首相が念頭に置くのは海洋進出を活発化する中国だ。中国艦船によるレーダー照射問題など、海空軍を増強し挑発をエスカートさせる中国の動きを抑えるためにも強固な日米同盟が欠かせない。
報告書は集団的自衛権を行使すべきかどうか4つの類型を検討した。(1)米国に向かう弾道ミサイルの迎撃(2)公海上での米艦船の防護(3)国連平和維持活動(PKO)などで行動を共にする他国軍への駆けつけ警護(4)PKOなどでの他国軍への後方支援――だ。このうち(1)と(2)で憲法解釈を変更して行使を認めるべきだと提言した。
柳井座長は終了後、記者団に「米同時多発テロや海賊、サイバーテロなど脅威の類型はほかにも色々ある」と述べ、前回の報告書を踏まえつつ幅広く検討する考えを示した。今回は結論を出す時期を明示しておらず「首相は時々の政策判断で機動的に集団的自衛権を行使したいと考えている」(首相周辺)。
首相は懇談会の議論を踏まえ、憲法解釈の見直しや必要な法整備を進めたい考え。ただ連立政権を組む公明党は解釈変更に慎重だ。山口那津男代表は8日の講演で「『行使を認めない』というこれまでの政府の考え方を支持したい」と慎重な議論を求めた。
参院で野党が過半数を占める「ねじれ国会」のもとでは必要な法改正へのハードルは高い。このため、首相は議論を通じて世論を喚起し、今夏の参院選後に具体的な法整備などを目指している。