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攻める「ネット配信」に守る「放送」 敵か共存か

UIEvolution 中島 聡

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 テレビをインターネットと連携させる「スマートテレビ」。米グーグルが先週、テレビに挿すタイプの新製品「クロームキャスト」を35ドルという超低価格で発売し注目を集めている。日本での発売は未定だが、近い将来に上陸する可能性が高いだろう。一方、国内ではパナソニックが4月に新型「スマートビエラ」を発売。ネットを積極的に活用して放送番組の魅力を高めるという、放送局にとって歓迎すべき製品だが、なぜかCMが流せないという混乱した状況になっている。

グーグルが24日に発表したクロームキャストはUSBメモリーのような形状のデバイスだ。テレビに付いている「HDMI」という規格の端子に挿し、無線LANのWiFi経由でスマートフォンやパソコンと接続する。「クロームキャスト対応」のアプリで"cast"ボタンを押すと、表示していたウェブページや動画をテレビに投射(キャスト)できる。たとえば、人気映像配信サービスの「ネットフリックス」や動画共有サイト「ユーチューブ」といった映像配信サービスで使える。

過去2回の失敗を検証して開発した端末

グーグルが出した家庭用テレビ向け製品は、これが3つめとなる。

最初の「グーグルTV」は、テレビの受像機にグーグルのOS(基本ソフト)アンドロイドを搭載していた。グーグルのコンテンツ配信サービス「グーグルプレイ」から音楽や映像の配信を受けたり、アプリをダウンロードして走らせるようにするなど、テレビそのものをスマートフォンと同様のスマートテレビにしようというものだった。

グーグルTVを搭載したテレビは、ソニー、韓国LG電子、米ビジオなどのメーカーが発売したものの、ほとんど売れずに終わった。技術的には興味深い取り組みだったが、テレビとしては機能が多く複雑過ぎる上に、消費者にとってのメリットがはっきりしなかったのが敗因だ。せいぜい数年に一回しか買い替えないテレビに、当時まだ急速に進化していたアンドロイドを搭載することに無理もあった。

2つめは「ネクサスQ」という球状のデバイスである。

テレビ本体とは切り離し、インターネットとつなぐセットトップボックス型にしたものの、使い方はグーグルTVと同様にグーグルプレイ上のコンテンツを楽しむ形だった。このため、「目的がはっきりしない複雑な多目的デバイス」という欠点も同じままだった。299ドルという高価格だったこともあって、消費者からの反応は冷たく、正式な発売前に中止に追い込まれ、製品として日の目を見ることはなかった。

 家庭用テレビ向け製品としては3回目の挑戦となる「クロームキャスト」は、テレビのHDMI端子につなぐ点ではネクストQのようなセットトップボックス型と同様だ。だが、専用のリモコンはなく、スマートフォン、タブレット、パソコンなどから操作できる点がネクサスQとは大きく異なる。値段もわずか35ドルと、ネクサスQの約10分の1という意欲的な価格だ。

ちなみに、スマートフォン、タブレット、パソコン上の動画や映像をテレビで見る、という仕組みを最初に提供したのはアップルである。「エアプレイ」という独自のプロトコルを使って、iPhone、iPad、Macのアプリケーションから任意の映像をテレビにつないだ「アップルTV」経由で表示する。

クロームキャストはアップルTVからエアプレイの機能のみを切り出した「映像投射」専用デバイスだ。インターフェースは究極なまで簡略化し、アプリやコンテンツのダウンロードや再生といった複雑な作業はすべてスマートフォンやパソコン側で指示するアプローチは、グーグルTVやネクサスQが失敗に終わった原因をグーグルが徹底的に検証した結果といえる。

パソコンとスマホに続き、家庭のテレビの制覇を狙うグーグル

グーグルが過去2回の失敗に懲りずに家庭用テレビへの進出にこだわるのは、「人々がなんらかの形でインターネット上の情報やコンテンツにアクセスする時間を1分でも増やし、かつ、そこに関わる」ことが会社の存在意義に関わる重要な使命と考えているからだ。

グーグルは、パソコン向けにはウェブブラウザの「クローム」とOSの「クロームOS」、スマートフォンとタブレット向けには「アンドロイド」、そしてネット上には「検索サービス」「グーグルマップ」「Gメール」などを提供している。これにより、パソコン、スマートフォン、タブレットに関しては、その使命を十分に達成しつつある。

そして、人々が接する機会が多いのに、また十分なアプローチができていないのが家庭用のテレビだ。グーグルから見れば、地上波やケーブルを介してコンテンツを流す従来型の放送は時代遅れ。いずれは全ての映像がインターネット経由で配信されるべきで、それを加速するのがグーグルの使命と考えているのだ。

放送の魅力を最大化するためにネットを活用

一方、パナソニックが4月に発売した新型スマートビエラは、クロームキャストのようにテレビに外付けするのではなく、テレビの受像機そのものを進化させた。グーグルTVとの違いは、あくまで「テレビ受像機は放送局から電波を通して流れて来る放送番組を楽しむためのもの」という視点に立っている点だ。その上で、その楽しみ方をインターネットの活用でどこまで進化できるかにチャレンジした意欲的な製品である。

新型スマートビエラの特徴は、そのインターフェースである。テレビに内蔵したカメラを使って、ユーザーを認識し、その人の好みのコンテンツを自動的に表示する。入力には音声認識を活用し、放送番組を視聴中に気になる言葉で簡単にネット検索できる。それも、放送番組を見たままで、ネットから取得した情報を同時に表示できるため、放送番組の楽しみ方が大きく変わるのではないかと期待される。

実はパナソニックのスマートテレビへのチャレンジも、新型スマートビエラが3回目となる。

最初はテレビにウェブブラウザーを搭載した「Tナビ」だ。だが、消費者にとっての価値を訴えられず、失敗に終わった。

2つめが、ソニーなど他社と協力して立ち上げたテレビ専用のポータルサービス「アクトビラ」だ。これも、テレビにブラウザーとポータルを足した程度のもので、消費者にはほとんど受け入れられなかった。

これらの失敗を教訓に、テレビ受像機の本来の目的である「放送番組の視聴」をどうやればより楽しいものに進化させられるか、というユーザー視点で開発したのが新型スマートビエラだ。

本来歓迎すべき製品に拒否反応を示す放送局

放送番組の楽しみ方を進化させる新型スマートビエラは、放送番組そのものを頭から否定しているクロームキャストやアップルTVとはアプローチがまったく異なる。若者たちの「テレビ離れ」に悩む放送局にとって、本来ならば大歓迎される存在のはずだ。

だが、日本の放送局がとった反応は違った。電源を入れた直後から番組とインターネットのコンテンツを同時に表示する点が、電波産業会(ARIB)で決めた「放送番組とネットから取得した情報の同時表示を禁止」した放送運用規定に違反するとして新型スマートビエラのテレビCMの放送を拒否したのだ。

 自分たちのサービスを支援してくれる製品を拒否するのは、一見すると奇異に感じる。だが、これまで「放送電波」という限られた資源を最大の武器にビジネスをしてきた放送局からすれば、インターネットによる映像の配信そのものが、自分たちのもつ武器を無力化する「天敵」だと考えている。そのため、その動きを支援することは極力避けたいという必死の思いがあるから、拒絶するという反応に出たのだ。

放送局からすると、クロームキャストのような新デバイスを使う人は、そもそもネットを使いこなせる消費者である。つまり、すでに通常の放送番組を見なくなっている人たちがターゲットなので、それほど大きな問題とはらなない。

ところが、新型スマートビエラは、自分たちの主たるターゲットである放送番組を日常的に見ている消費者を対象とした製品である。彼らがネットに触れる時間が増え、ネットに価値を見いだすようになると、放送のコモディティー化を加速し、放送局がユーチューブやニコニコ動画などと同じ土俵で戦わなければならない時代の到来を早めることになる、と考えている。

放送局にとって真の敵は別にある

日本の放送局は、若者たちの「テレビ離れ」の根本的な原因が、自分たちの作っている放送番組そのものにある、という事実を認識すべきだ。電波を通して流す番組よりも、フェイスブックに流れる友達からの情報や、ユーチューブの映像の方が楽しいから「放送番組」を見なくなっているだけだ。「いいね!」ボタンを押したり、友達に共有できない放送番組は楽しくないと感じている。

従来型の放送をインターネットと融合させる新しい楽しみ方を提供しようという新型スマートビエラは、放送局にとっても歓迎すべき存在だ。放送番組を見ながらネットを検索し、面白い場面はフェイスブックやツイッターで友達と共有する。これからの世代に放送番組を見てほしければ、そんな楽しみ方を否定すべきでない。

放送局にとって、本当の驚異はスマートビエラではなく、ユーチューブやニコニコ動画だ。クロームキャストやアップルTVはそんなネット上の映像コンテンツを楽しむ人達をテレビというデバイスに呼び戻すかもしれない。だが、その人達が見るのはもはや従来型の「放送番組」ではない。放送番組の新しい楽しみ方を可能にするスマートビエラをたたくような無駄な抵抗をすると、逆に消費者はますます離れていくだけだ。

放送革命という黒船は、もう目の前に迫っているのだ。

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