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原発再稼働の焦点、「活断層」議論かみ合わず

編集委員 滝 順一

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原子力発電所の新規制基準に基づく安全審査がスタートした。審査の焦点になると思われるひとつが、原発敷地内や敷地周辺の活断層の問題だ。活断層の有無をめぐっては、かねて懸案を抱えていた日本原子力発電の敦賀原発など4カ所について、原子力規制委員会による調査が昨秋から先行している。ただ作業が円滑に進んでいるとは言えない。例えば東北電力の東通原発1号機(青森県東通村)は、5月半ばに6回目の有識者会合を開いてから足踏み状態が続く。現地報告をまじえつつ、活断層評価をめぐる問題を整理してみた。

「木を見て森を見ない面があった」

東通原発は下北半島の先端近く、太平洋に面する。敷地面積は南北に長く、約358万平方メートル(東京ドーム約76個分に相当)と広大。敷地の北端に1号機(出力110万キロワット)がある。北側は東京電力の東通原発の敷地と隣接する。

「木を見て森を見ないような面があったのではないか」。4月18日に開いた同原発の「敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合」第4回会合で、座長を務める島崎邦彦・原子力規制委員長代理はこう指摘した。東通1号機の建設を認めた過去の安全審査に対する批判と受け取れる発言だ。この指摘は、活断層問題に関して規制委と東北電力のとらえ方の違いを端的に示す。

東北電力はボーリング調査などで得た試料をもとに活断層の疑いがある地形について個別に否定を試みてきた。一方、規制委が指名した4人の有識者は東北電力の敷地だけでなく、東電の敷地を含めた広い地域全体を眺めわたして判断を下そうとする。このため両者の議論はかみ合わないことがしばしばあった。

原子力規制庁(規制委の事務方)は5月9日(5回目会合)で、有識者会合がまとめる手はずになっている評価書の原案を示した。そこに書き込まれようとしていたのは敷地内の破砕帯を「耐震上考慮する活断層である」とする結論。1998年に原子力安全委員会(当時)が1号機の建設を認めた際の判断を覆す内容だ。座長の島崎氏も、この方向で議論の集約を促したが、現時点では有識者と東北電力の間だけでなく、有識者の間でも主張が分かれ、報告書はまとまっていない。

議論の最も大きな争点は、敷地内の比較的新しい地層(8万~10万年前以降)にみられる地形の変化(地層の段差や断裂、たわみ)がどうしてできたかにある。敷地内に掘られたトレンチ(溝)の壁面には、地層の変状がはっきりみられる場所がある。

もともと東通原発の敷地内の基盤となる古い地層には多数の破砕帯(割れ目)があることが、立地審査時からわかっていた。東北電力はこれらの古い破砕帯を500万年前以降動いていない「古傷」とみた。新しい地層の段差などができた原因は古傷が活動したことによるものではないと主張してきた。

 有力な根拠としているのが、ボーリング調査で地下100~300メートルの深さから採取した破砕帯の試料だ。いったん壊れた破砕部は現在は固まり岩石化している。500万年前ころに活発だった火山活動によって破砕部に鉱物が入り込んで固まり一体化しているとみられ、東北電力は「500万年以降に破砕帯は動いていないと考えられる」(鈴木一広・東通原発副所長)とする。

また新しい地層でみられる段差や断裂などの向きや大きさがバラバラで統一性がなく、地下の断層活動といった構造的な要因でできたものとは考えにくいともする。

「膨潤」原因説に懐疑的な有識者ら

では、なぜ新しい地層に様々な変状が生じたのか。東北電力は立地審査時から一貫して、古い地層の「膨潤」が原因と考えるのが「最も合理的な説明だ」と主張してきた。膨潤とは水を吸うと体積が膨らむこと。この地域の古い地層は膨潤する粘土鉱物を含むのが特徴だ。8万~13万年前に海面が現在より高かった時代に地面の弱い部分から水が浸入して古い地層が膨張、その影響で上に載った新しい地層に段差や断裂ができたとみる。

この主張を旧原子力安全委の専門家が受け入れ、1号機は建設された。しかし、規制委の有識者らは「膨潤」に懐疑的だ。昨年12月の初回会合から有識者の1人である金田平太郎・千葉大学准教授は、膨潤が関わっている可能性は認めつつも「膨潤のみですべての変状を説明するのは難しい」と主張する。

佐藤比呂志・東京大学地震研究所教授は「(第4系の新しい)地層を切る断層が膨潤でできたことなど聞いたことがない」と東北電力の見方を強く否定。産業技術総合研究所活断層・地震研究センターの粟田泰夫主任研究員も「活断層の可能性がないことを否定するのはほぼ不可能」との見方を打ち出した。

その後、東北電力は米コロラド州で観察された膨潤の実例を示したが、有識者側は「コロラドとは条件が異なる」などとして一蹴。湿潤な条件下で膨潤が起きたのが13万年前以降、過去に一度だけというのは不思議だと疑問を投げかけ続けている。

逆に有識者側が最も重視するのは、様々な地形・地層の変状が南北に連なってみえるという点だ。その現れ方は途切れ途切れで統一性に欠けるが、全体としては東北、東京電力の敷地を貫く形で、段差やたわみなどが観察できる。これは地下の断層活動のせいだと解釈しうるとみる。

東北電力が示した破砕帯の固結状況に対しては「こうした判断のときには使えないデータ」(粟田主任研究員)と相手にしない。活断層が動くにはいったん固着し、そこに力をためる必要があり、破砕帯に固着部があるのが当然だとみる。

 島崎委員長代理は「無責任な発言だが」と前置きしつつ「注意深くみれば、破断面はたぶんあるのだと思う」とする。よく調べれば500万年前以降に活動した部分がみつかるはずだとしている。

東北電力が変状や断層を個別にみて「活断層でない」証拠を提出するのに対し、有識者は東北電力が調べていない場所を含めて俯瞰(ふかん)し「活断層でないと言い切れない」と主張する。いわゆる「木」と「森」の議論になってしまい、科学的な根拠を相互に確かめ合うキャッチボールができていない。

見方を変えれば有識者会合の目的は、敷地地下の破砕帯が活断層であるかどうかの判定にはないといえる。「活断層はない」とする電力会社の主張が一点の疑いもなく正しいのか。その証明を電力会社に求め、証明を検証することが有識者会合の目的になっている。

その理由は旧安全委員会がまとめた審査の「手引き」において、「疑いを否定できなければ活断層とみなす」と判断基準が規定されているためだ。ルールブック通りに有識者は動いているのである。敦賀原発など他の破砕帯調査でも同様の議論が展開されており、今後の安全審査でもこの点は変わらないだろう。

電力会社は追加調査で大きな投資

東北電力は現在もボーリングやトレンチ掘削などの追加調査を進める。「活断層の可能性」に対する反証を示す計画だが、証明するのは容易ではないだろう。すでにボーリング本数は立地時から数えて約60本に達し、掘削の総延長は累積で5万メートルにも及ぶという。

結果として電力会社には大きな投資が要求される。敷地内の破砕帯が耐震上の考慮が必要との結論でまとまれば、耐震補強をしない限り東通1号機は稼働できないだろう。それを安全のため必要コストとみることはできるが、電力会社側には釈然としないものが残る。

東北電力は東日本大震災の被災企業であり被災地に電気を供給する責任を負う。被災した火力発電所を復旧しフル稼働させることなどにより供給責任を果たしてきた結果、燃料費の増加などで2013年3月期は連結ベースで1036億円の最終赤字となった。3期連続の赤字で、電気料金の値上げを申請せざるを得なくなった。東通原発を15年7月から再稼働させ燃料費の圧縮をもくろむが、これまでの活断層論議からは再稼働の見通しについては予断が許せない状況だ。

日本エネルギー経済研究所の小笠原潤一研究主幹は「来年以降、各地で原発の再稼働が実現するとなると、再稼働が遅れた会社との間で経営体力の差が大きく広がるだろう」とみる。東北電力の苦境は続く。

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