地方の歴史に脚光 郷土史や古文書、ネットで閲覧
(ネット巧者たち)
図書館流通センター(TRC、東京・文京)発のベンチャー企業、TRC‐ADEAC(同)が3月に開始した歴史資料のネット閲覧サービスが注目されている。地方の図書館や博物館に眠る郷土史や古文書、絵図をデータベース化して同社のサイトに公開する仕組みで、サイトにアクセスさえすれば資料をみることができる。自治体にとっても地域への関心を高める手段となりそうだ。
2010年から12年にかけて東京大学史料編纂所とTRCなど4社が共同で、歴史資料のデータベースのシステム「自治体史・歴史資料検索閲覧システム」を作成。石川県立図書館と連携し、同県史をモデルに全1500ページの本文、引用資料の画像や作成時期などの来歴も電子化した。
例えばサイト上の検索エンジンで「前田利家」と検索すると、同県史の何ページに載っているのか、どんな資料があるのかが探し出せる。画像には特別な加工処理を施してあり、タブレット型端末を使って拡大してもぼやけることなく鮮明だ。
「自治体史や古文書などは、取り扱いが難しく、一般の人はもとより研究者も気軽に利用できなかった」とTRC‐ADEACの田山健二社長(50)。その中で「地域の貴重な資料を広く一般に公開し、地域への関心を高めてほしいという自治体の要望は高まっている」という。
TRC‐ADEACは自治体などからの資料のデータベース化の受託料とサイトの掲載料を収入にする。受託料は自治体史の冊子の文章1000ページ分で500万円程度。掲載料は月額3万~10万円という。
サイト上では複数の自治体の歴史資料を横断した検索も可能。「新しい史実の発見につながる可能性もある」(田山社長)と期待する。
サイトに公開している自治体史は現在、石川県史と堺市史の2つだが、アクセス数は6月が13万6000件と3月比で倍増。他の自治体からもデータベース化の依頼が来ているという。
[日経MJ2013年7月19日付]