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吉本興業第三の舞台、「ユーチューブ芸人」増殖中

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劇場の舞台やテレビだけが活躍の場ではない。ネット上の動画に活路を求め、成功するお笑い芸人が増えている。人呼んで「ユーチューブ芸人」。吉本興業はネット上の動画サイトに独自制作のお笑いチャンネル「OmO(オモ)」を展開し、今や月間の再生回数は3000万回に上る。4000人の芸人を抱える吉本にとって、売れない芸人をいかに輝かせるかが課題になっており、ネットはその有力な手段となっている。

吉本がOmOを始めたのは昨年末。今年に入り徐々に拡大し、現在のチャンネル数は253、これまでの総再生回数は6億9000万回になる。お気に入り登録者の数は110万人で、10代、20代の若者層が多い。「最近の若い世代はテレビを見ない。代わりにネットの動画を見ている」(よしもとクリエイティブ・エージェンシーの井上篤)ことが、吉本がネットを重視する背景にある。

鈴川絢子(23)は吉本ナンバーワンのユーチューブ芸人だ。自身のチャンネル登録者数は5万9000人、総再生回数は2830万回になる。夫は構成作家、生後4カ月の子がいる。鈴川はコンビで漫才をやっていたが、まったく売れなかった。舞台に立てるのは多くて月に4、5回。テレビ出演など夢のまた夢で、月収数万円の日々だった。それがユーチューブに登場したとたん、大ブレークした。得意ネタは鉄道もの。筋金入りの「鉄子」で、名刺も切符のデザインにしている。鈴川がネットで受けたのは、視聴している層がテレビなどと違うのが最大の理由だろう。エッグ矢沢、藤原麻里菜など吉本からユーチューブ芸人が続々と誕生している。

吉本には4000人を超える芸人がいるが、東京や大阪で活躍できるのはわずか。アルバイトをしながらなんとか生活している芸人も多い。「少しでも多くの芸人が食えるようにしたい」(吉本興業社長の大崎洋)という思いから、吉本は地方に住居を移し、ローカル放送局や地方のイベントを中心に活動する「住みます芸人」プロジェクトをやっている。ユーチューブ芸人も、テレビや舞台で売れない芸人に活躍の場を作りたいという狙いがある。

それぞれの芸人たちが手掛けるユーチューブ上の番組に広告を出す企業があると、それが吉本の収益源になる。芸人たちは再生回数に応じて収入が増える仕組みで、鈴川のような人気ユーチューブ芸人になると、月収は数十万円になるという。売れっ子ユーチューブ芸人のもとには企業からタイアップ広告の依頼が来る。すでにロッテ、リクルートなどから芸人たちが新商品を紹介する動画の発注がきている。

吉本は今年、初めてインターンシップ制度を始めた。学生たちが挑戦した課題は、吉本の所属芸人が出演する動画を制作し、ユーチューブに公開するもの。就職活動で吉本には毎年、1万数千のエントリーがあるが、その大半がマネジャー志望だ。インターンでネット動画の制作を課したのは、ネット事業など吉本の活動が多様化している現実を学生に知ってほしいからだ。別のインターンシップのコースでは、同社がソフトバンクと共同で開発したロボット、ペッパーを活用したロボットエンタテイメントを考えるのが課題だった。

ネットとお笑いという、これまであまりなかった組み合わせが、新しいビジネスを生み出した。=敬称略

(編集委員 鈴木亮)

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