放射性物質漏れ、被曝計30人に 電磁石に不具合か
茨城県東海村にある加速器実験施設「J-PARC」の放射性物質漏れ事故で、日本原子力研究開発機構は26日、新たに24人の被曝(ひばく)を確認したと発表した。被曝線量は最大で1.7ミリシーベルト。被曝が確認されたのは、これまでの6人と合わせ30人となった。
また事故の原因は、加速した陽子の軌道を制御する電磁石の不具合により、高いエネルギーを持つ陽子が原子核素粒子実験設備に一気に流れ込んだためとみられることも分かった。実験をしていた高エネルギー加速器研究機構は、電磁石の電源に問題があったとみて、確認を急いでいる。
加速器は電子や陽子を加速させ、高いエネルギーを生み出す装置。高エネ研によると、J-PARCでは3つの加速器を用い、陽子を光の速さの99.98%まで近づけることができる。事故のあった実験設備では、加速した陽子をビームとして金に当て、素粒子を発生させる実験をしていた。
高エネ研によると、陽子は円周約1.6キロの加速器を通り、電磁石で軌道を制御しながら実験設備に送る。ところが、一部の電磁石のトラブルで陽子の軌道がうまく調整できず、設備への流れが一気に強くなったとみられる。
この結果、瞬間的に通常の約400倍の強さで陽子のビームが当たり、金の一部が蒸発。さまざまな放射性物質が発生して放出されたという。
事故は23日正午ごろ発生。実験設備のある建物内のほか、排気ファンを作動させたため、屋外も放射性物質で汚染された。建物に出入りしていたのは55人。〔共同〕