出産事故の脳性まひ救済、補償拡大へ見直し　機構

出産事故で重い脳性まひの赤ちゃんが生まれた際に補償金が支払われる産科医療補償制度で、運営する日本医療機能評価機構は23日、制度を見直す方針を決めた。当初の補償対象者は年間最大800人としてきたが、新たな試算では約2割減の同623人と推計。多額の剰余金が発生することから、同機構は補償拡大などを視野に見直し議論を進め、年内をメドに結論をまとめる。

同制度は2009年1月に開始。訴訟を回避して早期の解決を図るため、過失の有無にかかわらず総額3千万円の補償金が支払われる。保険料は妊婦が加入する健康保険が負担する形で1回の分娩で3万円。原則として妊娠33週以上で出生体重2千グラム以上の子供を対象としている。

当初の制度設計では、一部自治体の脳性まひの発生率のデータに基づき、補償対象者は年500～800人と推計。実際には約4年間で計500人程度にとどまった。このため、同機構はより多くのデータを収集・分析した結果、新たに年340～623人と推計した。

当初より実際は補償対象者が少なかったことから、年間120億～140億円の剰余金が発生する見通し。

同機構は剰余金の使い方のほか、補償対象者の基準緩和や補償金の引き上げ、保険料の見直しなどを検討。できるだけ剰余金が抑えられるような制度設計を目指す。

産科医療補償制度をめぐっては、産科施設と母親らが多額の剰余金が生じているなどとして、同機構に保険料の一部返還を求めて、裁判外紛争解決手続き（ADR）を国民生活センターに申し立てている。