派遣法改正案が審議入り 期限撤廃に野党は対決姿勢
労働者派遣法改正案が28日、衆院本会議で審議入りした。企業が派遣社員を受け入れる期間の上限を事実上なくす内容だ。民主党を中心とする野党は雇用が不安定になるとして対決姿勢で臨み、今国会での成立の見通しは不透明だ。
「よりわかりやすい規制にする」。塩崎恭久厚生労働相は同日の本会議で改正案の意義を語った。今の制度では、普通の仕事を派遣社員に任せられるのは最長3年。一方、通訳や調査、受付といった「専門26業務」はずっと任せることができるが、どこまでが専門業務にあたるのか線引きがわかりにくい。
改正案では2015年4月から業務の区分を廃止する。どの仕事も3年ごとに人を入れ替えれば、ずっと派遣社員に任せられるようになる。
派遣社員にとっては、雇用が安定する面もある。定期的に部署を変われば、同じ会社のなかでずっと働けるためだ。派遣社員への調査では派遣で働きたいと答える人が43%で、「正社員になりたい」(43%)と同数だ。働く時間や場所を選びやすいほか、自分の専門性を生かしやすいためだ。
派遣社員の処遇を改善するため、派遣会社に対して、派遣社員に教育研修を行ったり、キャリア相談に乗るよう義務付ける。悪質な派遣会社を減らすため、届け出制を廃止して、審査が厳しい許可制に一本化するなど規制を強める面もある。
「派遣労働者に一生、派遣で働くことを強要する法案だ」。民主党の海江田万里代表は同日の党代議士会で気勢を上げた。野党側は派遣社員が正社員になれなくなると批判しており、改正案を対決法案に位置づける。
同法案は安倍晋三首相が本会議や委員会で答弁する。安倍首相は来月上旬にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出発するため、政府・与党はその前の衆院通過を目指す。ただ与党幹部からも「法案審議は綱渡り状態」との声が漏れる。継続審議になれば、厚労省が年明けの通常国会で目指していた労働時間規制の緩和や、年金支給の抑制といった改革法案の審議が遅れる可能性もある。