検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

「限定正社員」どんな制度? 解雇ルールで労使対立

詳しくはこちら
 「政府が議論している"限定正社員"とはどんなものですか。クビにしやすくなると聞きました」。不安げな中年男性が事務所を訪れた。あくびをしていた探偵、松田章司が「それは困りますね」と、所長の視線を気にしながら飛び出した。

転勤なし、仕事変わらず

「限定正社員」は、今春、政府の産業競争力会議や規制改革会議でルール整備が提案された。安倍晋三首相の経済政策"アベノミクス"の成長戦略の一つらしい。

「正社員と何が違うのかな」。章司は規制改革会議で雇用分野のとりまとめ役を務める慶応大学教授の鶴光太郎さんに聞いてみた。

「普通の正社員は転勤や残業、職種の変更を受け入れないといけませんよね。これに対し仕事や勤務地などを契約で限定するのです」と鶴さん。派遣社員やパートなどと違い無期雇用で、一般に待遇は有期より良い。銀行や小売業など大企業の約半数が導入している。

鶴さんは「長時間の残業など働き方を巡る問題の多くは正社員の仕事が"無限定"なことで生じている」と指摘する。一方、転勤や残業がない限定正社員は子育てなどと両立しやすく、仕事が変わらないので専門性も高めやすい。

章司は労働政策研究・研修機構の統括研究員、浜口桂一郎さん(54)に議論が本格化した背景を聞いた。浜口さんは「4月に施行された改正労働契約法がきっかけです」と説明した。企業は同じ職場で5年を超えて働く契約社員やパートが希望すると、無期雇用に切り替えなければならなくなった。「業務や職場はそのままなので限定正社員になります。こうした働き方が増えることが見込まれ、ルールの議論が始まりました」

次に会ったニッセイ基礎研究所の主任研究員、松浦民恵さん(47)は「働き方に良しあしはありませんが、現在の非正規雇用は職業能力を高めにくい。増え過ぎるのは望ましくありません」と指摘した。正社員に比べ交渉力が弱く、仕事に見合った賃金ももらえていないという。

非正規は働く人の35%を占め、2~3割が正社員希望。章司が「限定正社員が受け皿になりますね」と言うと、松浦さんは「急速に増えるとは思いませんが、優秀な人材が集まらないと危機感を持つ企業から導入が進むでしょう」と答えた。

「でも、依頼人は『クビにしやすくなる』と心配していたぞ」。章司は経営者側の本音を探ろうと、経団連を訪ねた。労働法制本部主幹、鈴木重也さん(44)は「誤解があるようですが、正社員を解雇しやすくする意図はありません」と強調した。「正社員から限定正社員に転換するには本人の同意が必要です。狙いは解雇ルールの緩和ではなく"透明化"です」

鈴木さんは「解雇が有効か無効かは最終的に裁判所が判断するので不透明なのです」と説明する。例えばある事業所で非正規社員を限定正社員にした後、経営環境が悪化して事業所を閉鎖したとする。契約で働く場所をその事務所に限定していれば正社員より解雇しやすいはずだが、裁判所がどう判断するか予測が難しいという。「正社員の解雇ルールとの違いがはっきりすれば、非正規を限定正社員にする経営者が増えるはずです」と言う。

「依頼人は心配しすぎかも」。ところが、労働組合の団体、連合を訪ねると、副事務局長の安永貴夫さん(51)が「労働者保護のルールを緩めようとしています」と反論した。競争力会議では経営者が、労働契約法に「解雇自由」の原則を盛り込むことなどを提案した経緯がある。

「正社員に『転勤したくなければ限定正社員になってください』と持ちかけ、みんながハンコを押したところで工場を閉めて解雇するような例が出るかもしれません」。非正規の人が限定正社員になることについては利点があることを認めながらも「政府の会議で労働者の代表を入れずに議論するのはおかしい」と不信を募らせる。

「労使で受け止め方に違いがあるようだ」。頭を整理しようと、日本大学准教授の安藤至大さんを訪ねると「主張する人によって非正規の雇用安定、解雇規制の緩和、雇用流動化など思惑が異なり、混乱していますね」と指摘した。日本の雇用を巡っては労使双方に誤解が多いという。

すれ違う思惑

「まず、正社員は解雇できないというのは間違いです」。例えば「仕事ができない」ことを理由にした解雇は可能。経営難で仕事がなくなった場合も、「雇い続ける努力をした」「組合と話し合った」など企業側に求められる条件はあるが解雇できる。

「ただ、日本では欧米と異なり、会社は正社員を職種や勤務地などを自由に変えられる約束で雇うことが多い。その分、クビにする前に様々なチャンスを与えなければならないのは当然で、ルール自体が厳しいわけではない」と安藤さん。裏返すと、契約で勤務地や仕事を決めておけば、解雇を避けるため配置転換など会社が努力しなければならない範囲は狭まる。章司は「暗黙の了解で労使があいまいにしていた部分が多い雇用契約が曲がり角に来ているんだな」と思った。

最後に章司は日本総合研究所のチーフエコノミスト、山田久さん(49)を訪ね、「限定正社員を増やして雇用を流動化すれば、もっと成長産業に人が移りますか」と聞いた。山田さんは「誤解がありますが、かなり流動化は進んでいるのです」と指摘した。大企業は希望退職などで調整している。中小企業では正当な理由や手続きなしで解雇されることも多く、こちらはむしろ抑制策が必要だという。

「そもそも景気が良くないと人は転職できません」。限定正社員などのルールを変えただけでは効果が限られるという。「重要なのは業績が良いときに成長分野に人を移せるか。そういう時期は希望退職を募りにくいので、官民で公的な人材派遣会社を作り、出向などの形で成長産業に送り込むなど、別の工夫が必要かもしれません」という。

事務所に戻った章司が腰を下ろそうとすると、ネコの三毛が章司のイスを占領していた。「勤務地がこの場所と決まってるから三毛は限定社員なのかな」。章司がつぶやくと、所長夫人の円子が「もっと流動化してるみたいよ。午前中はお隣さんに雇われてるみたいだもの」

(松林薫)

[日経プラスワン2013年5月25日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_