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スマホは誰でも作れる モバイル時代の「盟主」、次の一手

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 インターネットへの接続機能を持つ端末の主戦場がパソコンからスマートフォン(スマホ)/タブレットといったモバイル端末に移行するなかで、スマートフォンなどに向けて半導体チップを供給する米Qualcomm(クアルコム)が勢いを増している。同社の株式時価総額は2012年11月、ついに米Intel(インテル)を抜いた。そのクアルコムが、さらなる勢力の拡大を狙って投入する切り札が「QRD(Qualcomm Reference Design)」である。端的に言えば、QRDを使えば「誰でも高機能なスマホを開発できるようになる」という。QRDを基に開発されるスマホは近い将来、新興国を中心に米Apple(アップル)から市場を奪う可能性がある。

毎年1月初頭に米ラスベガスで開催される、世界最大規模の家電展示会「International CES」。その開幕前夜の基調講演は、2012年までは米Microsoft(マイクロソフト)が15年間、務めてきた。2013年のCESでは、その舞台にクアルコム CEO(最高経営責任者)のPaul Jacobs氏が立つ。それは、同社がIT(情報技術)やエレクトロニクス業界のトレンドをけん引する「盟主」になったことを意味する。

実際、ファブレス(工場を持たない)の半導体メーカーであるクアルコムの業績は急な勢いで拡大している(図1)。2012年度(2011年10月~2012年9月)の会計原則(GAAP)ベースの決算は、売上高が前年度比28%増の191.21億米ドル、営業利益が同13%増の56.82億米ドルだった。いずれも同社として過去最高で、2013年度も好業績を見込んでいる。

スマホなどに向けた半導体チップセット(CPUの周辺回路を含めたチップの集まり)を手掛けるクアルコムの収入の柱は、半導体製品と特許ライセンス収入である。2012年度の売上高のうち、半導体やサービスの売上高が124.65億米ドル(前年度比35%増)、特許ライセンス収入が66.56億米ドル(同16%増)だった。

莫大な研究開発投資で多数の特許取得

クアルコムの事業モデルは、スマホなどに向けた半導体チップセットの販売や特許ライセンス収入で獲得した利益の多くを研究開発投資に充て、それを基に新しい特許の取得やチップセットへの新機能の導入を行うというものだ。

「先行して技術革新を進め、それらを提供することによって無線分野のエコシステム全体を進化させる」(同社 Senior Vice President and Chief Marketing OfficerのAnand Chandrasekher氏)。そのために、同社は毎年のように研究開発投資額を増やしている。2012年度の研究開発投資額は39.15億米ドル(前年度比31%増)で、こちらも過去最高だった。

メーカーの開発負担減らす

クアルコムは、ARM(アーム)アーキテクチャー互換の独自のCPUコアや各種の移動通信方式に対応するベースバンド処理回路などを集積したスマートフォン向けプロセッサーを「Snapdragon(スナップドラゴン)」ブランドで提供している。

「将来的にはすべての(個人向け)コンピューターがモバイルになるだろう。モバイルコンピューターはパソコンと比べ、統合しなければならない技術が大幅に増える。そのために我々は、必要とされる技術をどんどんチップセットに統合していく」(同社President and COOのSteve Mollenkopf氏)とする。

2011年からは、Android(アンドロイド)搭載スマホの開発を容易にするための参照デザイン「QRD」の提供を開始した(図2)。クアルコムのチップセットを使ったスマホの電気回路設計や機構設計、推奨部品の選定、ソフトウエア、各種のテストなどをあらかじめ実施した上でスマホメーカーに提供するものだ。メーカーの開発負担を大幅に軽減することで、中国や東南アジア、南米など新興国を含む地域で高い競争力を持つ安価なスマホを製品化できるようにする。

中国の3G利用者はまだ27%

例えば世界最大の携帯電話市場である中国では、「(従来型の携帯電話機で中国の市場を席巻した)違法の山寨機(シャンジャイジ)の市場はだんだん小さくなってきた。小規模なメーカーも2G(第2世代携帯電話)から3G(第3世代携帯電話)へ移行し、オープンな市場が拡大しつつある」(米Qualcomm Technologies Senior Director, Product ManagementのSean O'Leary氏)。

O'Leary氏によると、中国の端末出荷台数は年間7億台弱であり、10億弱の携帯電話利用者のうち3Gの利用率は27%にすぎないという。中国市場には3Gおよびスマホへの移行が同時に起こるという大きな市場機会が広がっているのだ。さらに、中国には90社以上のOEM(相手先ブランドによる生産)企業があり、「それらのOEM企業が中国だけではなくインドなど各国に端末を出荷している」(同氏)。

少ない負担で先端品を開発

QRDは、そのまま消費者に提供しても構わない水準の完成度で設計した参照デザインである。「外観のデザインやソフトウエア画面のデザインを変えるだけで、先端品に近い製品が完成する」(O'Leary氏)。2G対応の従来型携帯電話機向けに台湾MediaTek(メディアテック)が中国のOEM企業にもたらしていた携帯電話機開発の容易さと同様のものを、クアルコムが3G対応スマホで実現するための取り組みといえる。

具体的には、(1)電気設計および機械設計の設計図と部品リストや推奨サプライヤーのリスト、(2)ベースバンド処理の実行や搭載デバイスを駆動するためのソフトウエア群、検証済みのAndroidソフトウエアプラットフォームや複数のアプリケーションソフトウエア、(3)無線機能のテストやソフトウエア開発キット、(4)各種の認証の取得とフィールドテスト、などスマホ開発に必要な「一式」をクアルコムが提供する。これらの知的財産権のライセンスを提供しながら、クアルコムのチップセットの販売につなげている。

すでに40社以上がQRDを利用

クアルコムによれば、既に40社以上のOEM企業がQRDを利用し、100機種以上が市場に投入されたという(図3)。「QRDを入手してから60日以内で製品を市場に投入した実績がある。端末メーカーが開発コストを大幅に削減できるため、低価格なスマートフォンを実現しやすい」(O'Leary氏)。

例えば、LenovoやHuawei Technologies、ZTE、「Coolpad」ブランドのYulong Computer Communication Technology、Haier、BYDなどの中国企業が、QRDを利用しているという。

クアッドコアCPUがQRDに

クアルコムがこれまで提供したQRDは、いずれもアプリケーション処理機能とベースバンド処理機能を統合したプロセサ「MSM」シリーズを用いる。最初のQRDは、ARM11コアを搭載する「MSM7x25」および「MSM7x27」向けで、2011年第2~3四半期に投入した。続いて、CPU(Cortex-A5)の動作周波数が1GHz(ギガヘルツ)の「MSM7x27A」向けを同年第4四半期に、Cortex-A5をデュアルコア構成にした「MSM8x25」向けを2012年第2四半期にそれぞれ投入している。

同社は2013年第1四半期に、28nm(ナノメートル)世代の製造技術に向けた独自CPU「Krait」をデュアルコア構成にした「MSM8x30」や、クアッドコア構成のCortex-A5を搭載する「MSM8x25Q」に向けたQRDを提供予定である(図4)。MSM8x30は、中国の3大携帯電話事業者の移動通信規格すべて(TD-SCDMA、CDMA2000、W-CDMA、TDD/FDDモードのLTE)に対応している。

クアルコムは2012年12月4日に発表したクアッドコア品「MSM8x26」にもQRDを提供することを明らかにしており、随時QRDの品揃えを拡充する考えだ。

差異化の工夫が求められる端末メーカー

クアルコムのQRD拡張戦略は、端末メーカーに大きな影響を及ぼす。具体的には、(1)先行する端末メーカーが後発メーカーに追い付かれるまでの期間が短くなる、(2)新興企業や異業種の企業が容易にハードウエア事業に参入しやすくなる、といったことが想定される。

例えば、Kraitコアを使ったSnapdragonを搭載したスマホは2012年に登場した。そのスマホと同等のQRDを、どの端末メーカーも2013年第1四半期に入手できる状況にある。QRDを利用するメーカーが、1年程度の時間差で先行メーカーに追い付くことになる。

既存の端末メーカーは、追い付かれるまでの時間がどんどん短くなることを覚悟しながら、「ハードウエアメーカーとして新しい技術やアイデアの投入で先頭を走り続けるのか」「独自のネットワークサービスなどを使えることを売りにするのか」、はたまた「ブランドやデザインに特化するのか」といった戦略の練り直しを迫られる。

誰もが最先端に近いスマホを作れるようになった時代に、端末メーカーはどうあるべきか――。QRDは、スマホのメーカーに対して大きな課題を突き付けたともいえそうだ。

(日経エレクトロニクス 竹居智久)

[Tech-On!2012年12月11日の記事を基に再構成]

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