なまはげ伝承に「黄信号」 少子高齢化で担い手不足
秋田県・男鹿半島の伝統行事「なまはげ」の伝承に"黄信号"がともっている。少子高齢化により、なまはげ役を務める20代の若者が少なくなっているためで、行事の実施を見送ったり、高齢者が代役となったりする集落も増えている。
「ウォー。悪い子はいねがー」。昨年の大みそか、秋田県男鹿市五里合琴川の民家。なまはげ4匹が雄たけびを上げると、子供らは「いい子にしてます」と泣き叫んだ。
なまはげは大みそかの夜に鬼のような面を着け、わらの衣装に身を包んだ若者が家々を回る行事。日本海側各地に類似行事があるが、男鹿半島のものが最も有名で、1978年に国の重要無形民俗文化財に指定された。
かつては同半島のほとんどの集落で実施されていたが徐々に減少。男鹿市によると、昨年は148町内会のうち半数近くの71町内会が実施しなかった。
なまはげ離れを食い止めようと、男鹿市は2012年度に町内会への交付金制度を創設した。なまはげを実施する町内会に一律1万円と、1世帯あたり300円の補助金を支給し、伝統継承の動機づけにしてもらう狙いだ。それでも昨年暮れになまはげを復活したのは6町内会にとどまった。
最大の理由は担い手となる若者の減少だ。ほとんどの集落では年末年始に帰省した若者でしのいでいる。30~40代や、中には70代の高齢者がなまはげに扮(ふん)している集落もあるという。
男鹿市観光商工課の山本忠明主任(36)は「長い目で見ると、風習が失われてしまうのも避けられない」と懸念している。〔共同〕