東電の火力入札、2陣営が応札 地域独占崩れる
電力、大競争時代へ
東京電力は24日、新設の火力発電所から電力を調達する入札を締め切った。中部電力が東電と組む形で応札し、新日鉄住金とJパワーも名乗りを上げた。東電は今後も外部資金を取り込んで老朽火力の建て替えを進める。戦後から続く地域独占体制が崩れ、他電力の首都圏進出が本格化。異業種を交えた競争時代にようやく踏み出す。
入札に参加したのは2陣営。中部電・東電連合は東電の常陸那珂火力発電所(茨城県東海村)に新規の発電設備を導入する。新日鉄住金とJパワーは別々に応札したが、鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)に発電所を共同で建設し、それぞれが東電に電力を供給する。いずれも石炭が燃料だ。
今回の応札分で東電が調達できる電力は合計68万キロワット。2020年度の稼働で、原則15年間にわたって調達する。東電は計画を評価した上で、7月に最終決定し、10月に電力受給契約を結ぶ。
東電は260万キロワット分を調達する計画だったが、遠く及ばなかった。発電単価に環境対策費などを加えた価格の上限を1キロワット時あたり9円53銭とした入札条件が厳しく、当初関心を示した企業の多くが応札を見送った。
東電は不足分については13年度内に再度入札を実施する考え。今回は企業にとって検討期間が短かった。「次の入札に参加しそうな予備軍は多く、すべて足し合わせると400万キロワット分に達する」(政府関係者)との見方もある。
中部電の首都圏進出で電力市場の競争原理は大きく変わる。中部電は一部の電力を独自に売れるからだ。ある幹部は「東電管内で顧客を開拓して電気を売ることに重要な意味がある」と強調する。資金力のない東電を発電所建設で支援する一方で、小売りでは東電の顧客を奪う。
生産で手を組み、営業の最前線で競合するのは自動車や電機などの業界では当たり前。中部電に触発され、ほかの地域の電力大手も首都圏を目指す動きが出る可能性がある。中部電以外のある電力大手も今回の入札への参加を検討していたもようだ。
東電は東京湾沿いの老朽火力も入札を通じて建て替える方針。その規模は合計1千万キロワット超。多くはガスや石油を燃料としており、設備更新で収益力が向上する余地は大きい。建て替え案件を本命視する企業は多く、電力事業拡大を目指す都市ガス大手や石油元売り、商社が参加に意欲を示している。
電力の小売りで東電の競合相手が増えるのは確実だ。価格競争が促進されれば、利用者の選択肢が広がる利点も期待できる。
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