エジプト大統領、3県に非常事態宣言 デモ多発で
【カイロ=押野真也】エジプト各地で反政府デモが多発していることを受け、モルシ大統領は27日夜(日本時間28日未明)、同国北部のスエズとイスマイリア、ポートサイドの3県に非常事態を宣言し、夜間外出を禁じる命令を発令した。他地域に比べ3県ではデモ隊と警官隊との衝突が深刻化。ポートサイドでは27日にも死傷者が発生し、治安対策が急務になっていた。
非常事態宣言は28日から30日間で、夜間外出は午後9時から翌日午前6時まで禁止される。モルシ大統領の就任後、非常事態宣言の発令は初めて。同大統領は27日夜の声明で一層の治安対策を検討すると表明した。
エジプトは2011年2月の独裁政権の崩壊以降、治安が悪化。27日には北部のポートサイドでデモ隊と警官隊が衝突し、3人が死亡し、約440人が負傷した。12年2月に起きたサッカー場での暴動事件を巡る死刑判決を不服とする勢力が起こしたデモで、一部が暴徒化。実行犯は不明だが、18歳の若者が射殺されたとの情報がある。
これとは別に、モルシ大統領を支持する勢力と反大統領派が度々衝突し、死傷者が発生している。25~27日にカイロや地中海沿いのアレクサンドリアでは反大統領派と警官隊との衝突で10人以上が死亡し、500人以上が負傷した。
一連の騒動を受け、モルシ政権は軍や警察に与える権限を拡大することなど、治安対策の強化に向けて検討してきた。ただ、治安機関に過大な権限を与えれば強権的との批判を招きかねず、政府は対応に苦慮している。
エジプトでは独裁政権崩壊後、社会の混乱が続いて経済が低迷し、失業率が高まる傾向にある。特に、若者の失業率は20%以上に及び、社会への不満が拡大。反体制デモが続発している。治安改善にはこうした経済問題の解決が不可欠で、事態収拾には時間がかかりそうだ。