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サムスンを口説き落とした男 電動自転車、低価格で参入

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免税店を全国展開する永山(東京・台東)が電動アシスト自転車事業に参入した。大手メーカーの製品と同等の走行距離を実現しながら、価格を4割安く抑えた製品を開発。日本市場でシェア10%を目指す。なぜ免税店が電動アシスト自転車なのか。とっぴにも思えるが、4年越しで構想を温めてきた会長の張永軾(チャン・ヨンシク=44)には、絶対の勝算がある。

「欲しいのに高くて買えない人多いはず」

まずは、3月に発売した製品を見てみよう。

車名は「ギャラクシーパワー」。心臓部となる電池は韓国サムスンSDIが専用開発したリチウムイオン電池。1回の充電で30~39キロメートル走行できる。900~1200回の繰り返し充電ができる耐久性も確保した。現在はネット販売だが、近く大手量販店の店頭にも並ぶ予定だ。

希望小売価格は5万9800円。電動アシスト自転車はパナソニックサイクルテック、ブリヂストンサイクル、ヤマハ発動機が3強だが、同性能の車種の価格帯は10万~13万円台。割安感を武器に、初年度は3万台の販売、3強に次ぐシェア4位を目指す。

永山は1995年、張が創業した。主力事業は免税店。現在、東京・秋葉原や地方空港など全国に11店を展開する。2012年の売上高は126億円。免税店を軌道に乗せた張がなぜ、電動アシスト自転車なのか。

きっかけは早稲田大学ビジネススクールに通っていた10年、野村総合研究所の調査リポートを読んだことだ。一般の自転車は年10%ずつ市場が縮む一方、電動アシスト自転車は年10%以上成長している。当時の価格で15万円はする高額商品にもかかわらずだ。

「欲しいのに高くて買えない人は多いはず」。商機を感じ取った張は、市場調査を実施する。すると、2万9800円なら90%、3万9800円なら75%、4万9800円なら50%が「買う」と回答した。ターゲットは決まった。価格は大手の3分の1、4万9800円だ。

張はさっそく中国に渡り、部品調達のため何十カ所も飛び回った。だが、心臓部となる電池探しにてこずった。価格面で条件に合う鉛蓄電池やニッケル水素電池はあったが、いずれも重さや寿命に難があり、肝心の走行性能を満たせないのだ。

 突破口を探しているとき、知人に紹介されたのがリチウムイオン電池の世界大手、サムスンSDIだ。張にとって相手に不足はないが、サムスンにとっては、張は自転車事業の経験もない、無名の実業家。サムスンは最初、歯牙にもかけなかったが、張はあきらめなかった。「価格が3分の1なら必ずニーズはある。誰でも手が届く製品の開発は社会貢献だ」と大義を説き、半年かけて口説き落とした。

「SAMSUNG」のロゴにこだわる

人命を乗せる自転車に搭載されるだけに、サムスンもやる以上、片手間ではできない。セ氏マイナス20度からプラス60度まで動作する専用電池を開発。テストに半年を費やした。

完成した電池を前に、張はまた、サムスンに難題を吹っかける。電池に大きく「SAMSUNG」のロゴを入れるよう求めたのだ。だが、サムスンSDIは電池やディスプレーなどの部材を完成品メーカーに供給する、いわば裏方だ。だから自社製品であっても、社名を大書することはない。「それはできない」。サムスンは断った。

だが、無名の永山にとって、電池にサムスンの名前が大きく入るかどうかは、製品の信頼度やイメージを大きく左右する。譲れない一線だ。張はこう畳みかけた。「名前を付けられないのは、自社製品に責任を持てないからですか?」。むろん、サムスンは製品に絶対の自信がある。張の粘り勝ちで、電池には「SAMSUNG SDI」と大きく書かれることが決まった。

シマノ製の6段変速機、発光ダイオード(LED)ライトの採用など、基本性能を高めたことで、価格は当初計画より1万円高くなった。だが、それでも大手の同性能の車種より圧倒的に安い価格を実現した。

張は電動アシスト自転車を海外でも販売する計画だ。現在、韓国、豪州、アルゼンチンで商談中という。グローバル展開のため、張は電動アシスト自転車の生産を現在の中国から早ければ来春にも、日本に移すという。コストなら中国が圧倒的に有利なはず。なぜか。張は説明する。「世界は『メード・イン・ジャパン』を求めているからだ」。

工場は都内で探している。地方に比べて賃料は高いが、物流コストはあまりかからないからだ。高齢者を積極採用し、コスト上昇を極力吸収する。年内にはスポーツタイプも投入する。

 張をタフネゴシエーターに変えたのは日本だ。韓国南西部の光州市で生まれた張は地方の大学を卒業したが、ソウルへの一極集中が進む韓国では地方大出身者の働き口は限られている。日本で一旗揚げようと、漁師として働きながら渡航費を稼ぎ、93年に来日した。

電気自動車にも意欲

日本では焼肉店での鉄板洗いのアルバイトを皮切りに、乾物や音楽カセットの輸入販売で種銭を稼ぎ、家電販売を始めた。問屋から仕入れた品物をリヤカーで配達する小さな商売から、免税店事業は始まった。

「できなければ死ぬ」。それほどの覚悟がないと、ここまでこられなかったと張はいう。免税店もそうだ。日本に来る外国人観光客にとって「ソニーや資生堂の商品を置いていない免税店は何の価値もない」(張)。張はソニーに5年、資生堂に8年、辛抱強く通い詰め、取引を勝ち取った。

そんな張も絶望の淵に沈んだことがある。リーマン・ショックを引き金にした世界同時不況で外国人観光客が激減。順調に拡大してきた免税店の売り上げが急激に落ち込んだのだ。会社は赤字に転落。もうだめだと人生をあきらめかけた。

家族の寝顔をみて我に返り、再建に向けて全力で走り始めた張だが、一つの事業に頼る怖さを思い知った。電動アシスト自転車への参入は、外国人観光客向け流通業である免税店とは対極にある、各国の消費者を相手にした製造業を事業の柱に育て、外部環境に左右されない強い会社に変えたい、という切実な思いがある。

「将来は電気自動車にも参入する」。張は真顔で語る。荒唐無稽にも聞こえるが、この男なら本気でやってのけるのではないかとも思えてくる。裸一貫で起業し、あっと驚くことを知恵と度胸で実行する姿は、韓国・現代グループ創業者の故・鄭周永(チョン・ジュヨン)とも重なる。韓国財閥は世代交代が進み、経営は洗練されてきた。張のような泥臭い経営者は最近、韓国でも見かけなくなった。=敬称略

(産業部 鈴木壮太郎)

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