原子力機構理事長が辞任 もんじゅ点検漏れで引責
下村博文文部科学相は17日の閣議後の記者会見で、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を運営する日本原子力研究開発機構の鈴木篤之理事長が同日付で辞任したことを明らかにした。16日に鈴木氏から辞意を伝えられ、受理した。文科相は「(鈴木氏が)自ら下した判断を重く受け止め、受理することにした」と述べた。
辞任は、もんじゅで約1万点の点検漏れが発覚し、15日に原子力規制委員会から管理体制が改善されるまで運転再開への準備を認めない処分を受けた責任を取る。後任について下村文科相は「できるだけ早く考えたい」と述べ、失われた信頼の回復に努める考えを示した。当面は理事長職は空席のまま、辻倉米蔵副理事長が代行を務める。
もんじゅの点検漏れは昨年9月に旧原子力安全・保安院の検査で発覚。原子力機構が内部調査した結果、昨年11月に約1万点の点検漏れが見つかり、このうち安全重要度が最も高い「クラス1」の機器も多かった。
規制委が2月に実施した抜き打ち検査でも機器の検査不備が新たに発覚。にもかかわらず、鈴木氏は「実質的な安全性は確保されている」などと事態を軽視した発言をし、組織の体質の問題が指摘されていた。
規制委の処分を受け、16日には文科省も独立行政法人通則法に基づく是正措置要求を出し、再発防止のための体制整備を求めた。安全確保のための取り組みを最優先するとともに、責任の明確化を求めていた。
もっとも、理事長の辞任で問題が解決するわけではない。トラブル続きで士気の低下も懸念されており、根を深く張った体質の問題を改善するのは容易ではない。