規制委、新基準を正式決定 再稼働の時期焦点に
原子力規制委員会は19日、東京電力福島第1原子力発電所事故を受けて見直していた原発の新規制基準を正式に決めた。閣議決定を経て7月8日に施行し再稼働に向けた申請を受け付ける。電力各社は新たに義務づけられた安全対策工事を進めており、6原発で申請する見通し。新基準が求める安全対策費用は電力業界全体で1兆3000億円を超す。審査には少なくとも半年かかるとみられ、再稼働の時期が焦点となる。
規制委の田中俊一委員長は19日の会合で「国際的にみてもきちんとした水準の基準ができた」と話した。規制委は昨年10月に規制基準の見直しに着手。安全対策について23回、地震・津波では13回の専門家会合を開き検討してきた。世界各国より遅れていた過酷な事故(シビアアクシデント)対策を充実し、東日本大震災並みの地震や津波にも備えるよう求めた。
12万~13万年前以降の地層を調べていた活断層については見つからなければ40万年前まで探すよう電力会社に要請する。原発の直下に活断層があれば運転は認めない。津波も防潮堤で敷地への浸水を防いだうえで建屋や機器も防水化を求める。
安全対策の機器についても、種類や台数などを例示し強化を求めた。緊急時に原子炉を冷やすポンプや電源車は各号機ごとに2台を用意し、予備品も置くよう要請した。
原発の寿命を原則40年と定め、最大20年の延長申請を認める仕組みも導入した。これまで明確な寿命を定めていなかった老朽原発に期限を設け、電源ケーブルの火災対策なども厳格化した。
従来は基準を満たさない原発の運転を止める法的権限がなかったが、新規制基準では法的に基準達成を義務づけた。規制委が経済産業省から独立したことを踏まえ、原子力政策とは距離を置き安全性の面から審査する。
7月8日に再稼働に向けた申請受け付けが始まるのを受け、電力会社は新規制基準への対応を急ぐ。沸騰水型軽水炉(BWR)に義務づけられたフィルター付きベント装置は東電や東北電力などが着工した。
新基準で義務づけられていない対策も各社が自主的に実施しており、免震棟建設や、津波の想定より大幅に余裕を持たせる防潮堤のかさ上げなどを進める。これらは完成前でも、再稼働が認められる見通し。
現在、北海道、関西、四国、九州の各電力が加圧水型軽水炉(PWR)の6原発12基で再稼働申請を準備中。ただ審査には少なくとも半年程度かかるとされ、再稼働には地元合意の手続きも必要となる。再稼働が遅れれば経営への打撃は避けられない。各社は早期に対策を終え申請を目指す。
関西電力は19日、「速やかに大飯3、4号機(福井県)および高浜3、4号機(同)について申請したい」とのコメントを発表した。
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